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『せかいのおきく』黒木華×寛一郎×池松壮亮 映画が持つ社会的メッセージとは【Actor’s Interview Vol.32】

『せかいのおきく』黒木華×寛一郎×池松壮亮 映画が持つ社会的メッセージとは【Actor’s Interview Vol.32】

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映画が持つ社会的メッセージとは



Q:モノクロ、スタンダードサイズ、時代劇と、昔の日本映画の手法を受けつつも、とても新しく“今の映画”である感じもしました。今回の手法に関して何か感じたことはありますか。


寛一郎:僕らの言葉はあまり江戸時代に寄せていませんし、所作もそこまで考証したわけではない。時代劇という形を借りてはいますが、言いたいことはあくまでも今日に通じること。“今の映画”である感じは、そこが大きいのかもしれません。


池松:改めてモノクロの力はすごいと思いました。季節の移ろいやあらゆるものがカラーで観るよりむしろ残像として残りました。とても鮮やかで美しい画でした。世界ではモノクロの傑作が毎年数本出てきます。日本映画も技法としてのモノクロを見直すべきだと思っていました。何を映すためにモノクロ映画にするのか、何を物語るために時代劇にするのかが最も重要だと思います。



『せかいのおきく』©2023 FANTASIA


Q:この作品のように、映画が社会的なメッセージを伝える意義をどのように思われますか。


黒木:映画は撮っている人たちの強い想いがあるので、たとえ社会的なものじゃなかったとしても、どこかに何かしらのメッセージや意義が含まれていると思います。


寛一郎:よく言われるのは、その時代の映画を観れば社会がどうなっていたのかが分かるということ。必ずしも社会的意義を持つ必要はないと思いますが、結果として意義のある作品に関われたのは、僕にとってはすごく嬉しいことでした。僕はSDGsって言葉自体があまり好きじゃないんです。でも満生さんは環境について真剣に考えている人だから、その意志も含めて僕は参加したいと思ったし、もう一つのテーマである「まわる(循環)」ということにすごく共感しました。こういった映画は残していくべき意義があると思いますね。


池松:これまでこの国ではあまりにも社会的メッセージが阻害されてきて、表面的なエンターテインメントばかりになってしまった。社会とエンタメが交わらないもの、お金にならないものとされてきました。はっきり言って島国の平和ボケによるものだと思います。映画にはもっと可能性があって、物語に可能性があることを見直すべきだと思います。何を伝えるべきなのかを考えて、映画も持続可能なものに戻さなければ、日本映画は内容の面においても製作的な面においても衰退する一方です。映画という先人が繋いでくれた叡智を未来に繋いでいくべきです。映画よりも絵本の方がまだ正しいことを言っているのではないでしょうか。


この映画におけるうんちが社会や人が豊かに生きること、命も経済も回していたことと同様に、映画が人に様々な豊かさや、エンタメを提供することと、社会を良くすることが決して相反するものではなく、同時に出来ることなんだということを何としてでも未来に伝えていくべきだと思っています。



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黒木華

1990年、大阪府出身。2010年、NODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』でデビュー。『小さいおうち』(14)でベルリン国際映画祭銀熊賞、『浅田家!』(20)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。現在、『ヴィレッジ』が公開中。【主な出演作】『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16)、『日日是好日』(18)、『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(21)、『余命10年』(22)、『イチケイのカラス』(23)、『#マンホール』(23)


寛一郎

1996年、東京都出身。 17年、『心が叫びたがってるんだ。』で映画初主演。『菊とギロチン』(18)ではキネマ旬報ベスト・テン新人男優賞など多数受賞する。 22年には出演作『ホテルアイリス』『月の満ち欠け』が公開されたほか、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出演。さらに、23年には初舞台にて主演を務める「カスパー」を控えている。【主な出演作】『チワワちゃん』(19)、『一度も撃ってません』(20)、『劇場』(20)、『泣く子はいねぇが』(20)、『AWAKE』(20)


池松壮亮

1990年、福岡県出身。03年、『ラスト サムライ』で映画デビュー。以降、映画を中心に多くの作品に出演し、多数の映画賞を受賞。近年は海外作品にも出演し、幅広く活躍している。 待機作に、『白鍵と黒鍵の間に』(23年10月6日公開)、『愛にイナズマ』(23年秋公開)がある。【主な出演作】『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(17)、『斬、』(18)、『宮本から君へ』(19)、『アジアの天使』(21)、『ちょっと思い出しただけ』(22)、『シン・仮面ライダー』(23)



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『せかいのおきく』

4月28日(金)GW全国公開

配給:東京テアトル / U-NEXT / リトルモア 

©2023 FANTASIA

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