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『ポトフ 美食家と料理人』ブノワ・マジメル 演じる役と自分の共通項を見つけること【Actor’s Interview Vol.35】

(c)Carole-Bethuel(c)2023 CURIOSA FILMS- GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA

『ポトフ 美食家と料理人』ブノワ・マジメル 演じる役と自分の共通項を見つけること【Actor’s Interview Vol.35】

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ジュリエット・ビノシュとの信頼の絆



Q:自由という点で、トラン・アン・ユンは俳優に演技を任せるタイプの監督ですか?


マジメル:トランはワンシーン、ワンカットで撮ることが多く、そうなると俳優は流れで演技ができるので、自由を得られた気分になります。おそらく監督は俳優の直感的な動きを信頼しているのでしょう。クロード・シャブロルやアルフレッド・ヒッチコックのように、俳優の動く距離や体の向きまで細かく決める監督もいます。この『ポトフ』はまったく違いました。俳優は自由を感じてしまえば、監督の要求にも従順になるのではないでしょうか。


Q:つまりあなたは自由に演じられる現場が好きなのですね。


マジメル:いや、そういうわけではなく、それぞれの監督に順応することが好きみたいです。一緒に作り上げる感覚ですね。今回は自由さを感じたことで、ドダンの気質を理解できた気がします。その情熱的な性格を息づかいで表現できましたし、料理の際に匂いを嗅ぐ仕草などは、まさに自由な演技から生み出されたと信じたいです。



『ポトフ 美食家と料理人』(c)Stéphanie Branchu(c)2023 CURIOSA FILMS- GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA


Q:本作の撮影はセットではなく、実際に片田舎にあるシャトー(邸宅)で行われました。演じる側も気分が違うものですか?


マジメル:そこはプラスアルファです。“作り物”を使わない環境の方が、われわれも真実を伝えやすいですから。もちろん俳優には、想像力をはたらかせて演じる方が好きな人もいるでしょう。しかしこの作品では“本物”の要素が効果を上げていたと実感します。その最高の例が料理ですね。劇中で私たちが食べるのは、紹介されたレシピどおりの本物で、たとえばウズラの料理を味わうシーンでは、俳優として心から美味しいと感じていることが、映像から伝わるはずです。まだ子役だった12歳の頃、私は撮影現場でみんなが食事にこだわる様子を見て、不思議でした。子供は成長するために食べていたわけですが、大人は違う。本作のドダンが「ウージェニーを愛するために食べている」思いなど、現在の私だからこそ理解できたのです。


Q:そのウージェニー役のジュリエット・ビノシュとの共演はいかがでしたか? 私生活でも長い付き合いのあった相手との演技は、やはり親密なものになるのでしょうか。


マジメル:20年以上も前、『年下のひと』(99)で共演したのですが、撮影前は「ジュリエット・ビノシュ? どんな仕事になるんだろう」と不安でした。しかし結果的に、才能のある俳優と仕事をした感覚を得られたのです。よく知る人との共演ではすでに信頼の絆が存在するので、シンプルでラクかもしれません。ドダンとウージェニーが、さりげないセリフで相手への思いやりを示したり、あるいは私生活のパートナーでありながら、相手の心をざわめかせたりしますが、そういう関係性も相手がジュリエットだからこそ表現できたと思います。ジュリエットは政治的発言もするので、時々心配になりますが、100%自立した人間であるからこそ、どんな役も体現できる。そのジュリエットに限らず、今回の共演者たちとは、相手を驚かせる演技をし合ったりして、とにかく親密な現場でした。




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