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「THU JAPAN 2023」村井さだゆき 人は「コード」によって動かされている【CINEMORE ACADEMY Vol.29】

「THU JAPAN 2023」村井さだゆき 人は「コード」によって動かされている【CINEMORE ACADEMY Vol.29】

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物語の持つ二面性とは



Q:手掛けられている作品は、アニメならではの表現も多いですが、脚本にはどのように落とし込まれているのでしょうか。


村井:『PERFECT BLUE』には、商店街の上を走るという描写がありますが、実はアニメを作る人たちは、そういった描写が面白いとは思っていなかった。僕は実写畑から入ってきたこともあり、「今の日本ではこの描写を実写で撮るのはすごく難しい。そこをアニメで描くことがとても面白いのだ」と伝えたことがありました。ネタは身近にありつつも、商店街の上を走ったら面白いというのは、普段なかなか気づかないんです。身近なところを違う風景として見せてあげることによって、観客は新たな映像を観て体験ができる。当時の我々はそう考えていました。


Q:タッグを組まれていた今敏さんとのお仕事はどのような感じだったのでしょうか。


村井:今言った『PERFECT BLUE』に関しては、今さんはすごく理解力があって、すぐにわかってくれました。一方で「こんな表現が面白いわけがない」と思う人も当時はいて、今さんとの軋轢がありましたが、今さんは自分の画コンテでそれを説得していました。また、我々二人の世代的な共通言語みたいなものもあり、そこは大きかったかもしれませんね。


PERFECT BLUE』や『千年⼥優』は、主人公をずっと追いかけていく、主人公中心主義のように見えていて、実は裏をかいているんです。うまく裏をかいているからこそ観客の心理を転がすことに成功している。オーソドックスな作り方に則っているように見えて、二転三転させていく。当時は、やっていた我々も楽しかったですね。




Q:今回のTHUのテーマは「ストーリーテリング」ですが、それについてはいかがですか。


村井:物語をフィーチャーしたイベントというのは、とても画期的ですね。アーティストとしては、目に見える成果物の方がわかりやすく、これまでストーリーがフィーチャーされることはあまりなかった。そういった中で、どうやって皆に伝えていくのか、それぞれの人が創意工夫してプレゼンテーションしている。ここから新しい物語の語り方が生まれると面白いですね。ただし、物語というものは二面性があって、非常に危険な部分も多い。物語は面白いと同時に「ヤバいものだぞ」と思っていただけることも、もしかしたら成果の一つなのかもしれません。


また、物語の需要が大きくなっていることは皆さん感じていると思いますが、それが良いことなのかと言われると、作り手としては決して良いこととも言い難い。配信のプラットフォームが整理されて、たくさんの物語が消費されている今、産業としても大きくなっているし、雇用は増えているかもしれません。でも作り手が幸せになっているかというと、決してそうではない。誰もが作り手になれるけれども、消費されて使い捨てられていくだけの物語を作らされている。そのことに気づいている人はあまりいないんです。


この状況が危険だと思いつつも「じゃあ物語を作るのをやめよう!」とはならない。それは無理なんです。一度物語を作り始めると作り続けないといけない、そういったときにどんな物語を紡ぐべきか、そのことを一度立ち止まって考えなくてはいけないのではないか。それが今回の裏テーマとしてあるのかなと思っています。自分が作ろうとしているものが、世界を不幸にする可能性もあるかもしれない。そのことに気づかないと、非常に危ういことになってしまう。それを一人一人が考えていく必要があると思っています。



次回は早川千絵監督のインタビューを掲載予定。お楽しみに!



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。



THU JAPAN:https://www.trojan-unicorn.com/ja/bootcamps/thu-japan

instagram:@thu_japan


THU 2024 ポルトガル・トロイアにて開催決定!

日時:2024年9月30日〜10月5日

Knights:ダグ・チャン:Lucas Film SVP / 「SFデザインテクニック」 (著)、トニー・サンドバル:コミックアーティスト、リアム・ウォン:写真家/ゲームデザイナー/写真集「LIAM WONG TO:KY:OO」他多数。

チケットの購入は公式サイトより。

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