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『アイアンクロー』ショーン・ダーキン監督 試合ごとに撮影方法を変えたプロレスシーン【Director’s Interview Vol.396】
試合ごとに変えた撮影方法
Q:仲の良い兄弟、子供たちを愛する父親、スポーツに打ち込み成長していく姿など、一見輝かしく見える人生の裏側に生じる“ひずみ”がとても丁寧に描かれていました。脚本を作る際に気をつけたことはありますか?
ダーキン:明るい面もダークな面も常に両方見せ、複雑な部分を捉えることを目指しました。たとえダークな面を見せたとしても、それをジャッジするような描き方はしていません。どんな家族でも色んな面を持っていて、家族のために良かれと思ってやっていることが、必ずしも良い結果に繋がるわけではない。父親のフリッツは「子供たちをレスラーにすることで彼らが救われる」と盲目的に信じ、子供たちをリングにあげて戦わせましたが、それが逆の結果となってしまった。母親も、父親を支えることが子供たちにとってベストだと信じていましたが、子供たちにとっては決してそうではなかった。そういった複雑な部分を見せたいと思いました。
『アイアンクロー』© 2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.
Q:プロレスシーンはあえて抑制の効いた描き方をされていたと思いますが、監督自身プロレスファンということで、もっと描きたいといった葛藤はありましたか?
ダーキン:もちろんです(笑)。「もっと試合を見たい!」というファン心理もあったのですが、それぞれの試合が持つ最も強い感情の部分を選び出し、それに集中しようと最初から決めていました。それぞれの試合の感情の違いを見せるために、撮影方法も都度変えたくらいです。この映画で描くべき試合は慎重に見極めました。
また今回は、キャストの皆さんがトレーニングを積んでくれたおかげで、ほとんどスタント無しでプロレスシーンを撮ることが出来ました。試合シーンは頭から終わりまでほぼ一発で撮っていますね。