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『アイアンクロー』ショーン・ダーキン監督 試合ごとに撮影方法を変えたプロレスシーン【Director’s Interview Vol.396】

© 2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.

『アイアンクロー』ショーン・ダーキン監督 試合ごとに撮影方法を変えたプロレスシーン【Director’s Interview Vol.396】

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監督人生、きっかけは『シャイニング』



Q:ケビンをはじめとする子供たちは、家父長制(父親)に対して反発するのではなく、ごく当たり前にそれを受け入れつつも、時間と共にそれに苦しめられていきます。その原因に気づくこと自体にも時間がかかっているようでした。


ダーキン:あるシステムの中に生まれ、そのシステムを一旦信じてしまうと、システムが自分に危害を加えていたとしてもなかなか気づかない。そのシステムが「家族」だった場合は尚更です。例えば18歳まで家族と過ごして、外の世界に出て初めて「自分たちの生活は普通ではなかったのかも」と、問いが生まれることがありますが、プロレス漬けの日々を送るケビンたちは、そういった問いすら頭に浮かばなかった。彼らにとっての“気づき”は、より届きにくいものだったのかもしれません。


彼らだけに限らず、時間がかかる人は他にもいるし、最後まで気づかない人もいます。一旦何かを信じてしまったら、そのマインドを変えることは難しい。実際にそれがネガティブなことだと分かっていても、変えること自体に恐怖を覚えている場合もある。それまでのやり方に慣れてしまっているからこそ、変えられないこともある。マインドを変えることは、とても時間が掛かるものなのです。



『アイアンクロー』© 2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.


Q:この映画を作る際に『レイジング・ブル』(80)や『ディアハンター』(78)を参考にしたとコメントされていますが、監督自身が影響を受けた映画や監督を教えてください。


ダーキン:アラン・J・パクラ監督の『コールガール』(71)、『パララックス・ビュー』(74)、『大統領の陰謀』(76)といった、カメラマンのゴードン・ウィルスとのコラボレーション作品に、ビジュアル的に大きな影響を受けました。妄想や心理を非常にデリケートに、センシティブに扱っているところも比類なきものを感じます。また、全般的に70年代のアメリカ映画には影響を受けています。他にも、アルトマン、ハネケ、アントニーニやヒッチコックも好きですね。


もし1本だけと言われたら『シャイニング』(80)を選びます。13歳のときに観たのですが、この作品で人生が変わったと言ってもいいくらい大好きな作品で、映画における監督の存在や力を初めて理解させてくれた作品です。



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監督/脚本:ショーン・ダーキン

1981年12月9日生まれ、カナダ出身。2011年『マーサ、あるいはマーシー・メイ』で長編デビューを果たす。同年のサンダンス映画祭コンペティション部門でプレミア上映され、監督賞を受賞。さらに第64回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門、第36回トロント国際映画祭でも上映され、その他数多くの映画賞にノミネート、高い評価を受けた。2作目『不都合な理想の夫婦』(19)は2020年サンダンス映画祭でプレミア上映、翌年の英国インディペンデント映画祭で最優秀英国インディペンデント映画賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞を含む6部門にノミネートされた。以降も監督、脚本家、プロデューサーとして幅広く活躍。リミテッドシリーズ「DEAD RINGERS」(22)の監督・製作を担当し、2023年エミー賞の優秀撮影賞などいくつかの賞にノミネートされた。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。




『アイアンクロー』

4月5日(金)TOHOシネマズ日比谷ほかロードショー

配給:キノフィルムズ

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