現場で全く悩まなかった24歳の新人監督のビジョンとは?二宮健監督『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』【Director’s Interview Vol.4】
二宮流演出術
Q:本作は美しい画がスクリーンを支配してて、映画のルック(映像の見栄え)のクオリティーが高いなと思いました。現実と虚構が入り乱れるという、ちょっと荒唐無稽な内容にもかかわらず、ちゃんと画に説得力があったなと。
二宮:撮影は相馬大輔さんという方で、とてもお忙しい方なのですが、相馬さんが参加してくださったのは作品にとって、すごく大きなことでした。彼と「こういう画づくりしたいですよね。」って話も沢山しましたし、相馬さんの中から出てきたアイデアも沢山作品に盛り込まれています。撮影後のカラーグレーディング(映像の色調整)時に、僕が細かく「こういう風にしたい」っていうビジョンを相馬さんに伝えたりもしています。
日本映画は映像の質感がすごく欠落してるなと、僕は常々思っています。もともとの予算が海外とは違うのでもちろん限界はありますが、それでも最善は尽くしたく、その辺はすごく心掛けてやっています。
Q:少し話がそれますが、監督が演出されたディーン・フジオカさんのPVを拝見しました。あの作品もルックのクオリティーがかなり高いですが、カメラマンは同じく相馬さんですか?
二宮:いや、別の方です。スタッフを変えていく中でも、共通して作品に反映されていくものは自分のエッセンスだと思ってます。ただ、自分のそれが何なのかまだ自分でもよく分かっていないので、いろんな方たちとやっていく中で、無意識に自分が目指していってるものを探しているんだと思います。
Q:役者さんの演出について聞かせてください。登場人物は皆かなり個性的で、振り切ったキャラクターばかりです。キャラクター設定は脚本段階で細かく深掘りされたのでしょうか。
二宮:キャラクターについては、演じる俳優さんそれぞれが肉付けした部分もたくさんありますが、こういう感じのキャラクターっていうのは、脚本の段階である程度提示はしていました。
Q:そのようなキャラクターを、出演者の方に対して具体的にどのように演出されていったのでしょうか。
二宮:話し合いはいっぱいしました。特にオリアアキ役の桜井ユキさんとは撮影前から沢山ディスカッションをしました。現場で一つ一つ細かいことを言うような時間はなかったので、現場に入る前に如何にお互いを信頼し合って挑めるかっていうことを、重要視していたのかもしれません。
Q:脇を固める満島真之介さんも、かなり振り切った面白いキャラクターですよね。
二宮:あれは、「ときめきチャーリー」っていう役なんですけど、あの役自体が僕の過去の映画にも結構出てくるキャラクターで、手塚治虫におけるハム・エッグみたいな感じなんですけど。今回、真之介くんにやってもらったんですが…、あれ多分本人の素に近い部分ですよね、どっちかっていうと(笑)
Q:素なんですか(笑)!?
二宮:多分、いろんな意味で。