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『東京カウボーイ』井浦新 世界は日本をちゃんと見ている【Actor’s Interview Vol.39】

『東京カウボーイ』井浦新 世界は日本をちゃんと見ている【Actor’s Interview Vol.39】

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海外と日本、現場の違い



Q:海外作品が描く“日本”にありがちな、ヘンテコな日本が全く出て来こないのが意外でした。


井浦:それは藤谷文子さんが脚本を担当してくれたおかげです。ですが一箇所だけあったんです。東京で仕事中のヒデキが移動の合間に道路で昼食を取るシーンがあるのですが、あれがマーク監督のイメージする日本人サラリーマンだったらしく、「どうしても箸で食べて欲しい」と。もちろん、外で何かを食べることは世界中どこでもあると思いますが、いくら日本のサラリーマンが忙しくても、パンやおにぎりならまだしも、道路に立って箸を使って食べるのはさすがにないんじゃないかと(笑)。そこは最後まで議論したのですが、監督はとてもこだわっていました。


Q:日本での撮影に関しては、井浦さんの方から監督へ色々と提案されたと聞きました。


井浦:そうですね。東京のロケ地などは、海外の人が想像するビル群以外の、海や山、田んぼや畑、夜の首都高速や湾岸の工業地帯、日が沈むときにシルエットになるレインボーブリッジなど、東京の人が見ても美しいと思える景色を色々と提案しました。ただ、ヒデキはコンクリートジャングルでバリバリ働く企業戦士にしたかったこともあって、自然の方は描けなかったのですが。


役柄的にも、芝居をしていく中でヒデキを通して感じたことは、脚本の藤谷さんや監督に相談してセリフをブラッシュアップしました。そうやってみんなで作っていく感じがありました。



『東京カウボーイ』


Q:これまで相当数の現場を経験されていますが、国内作品と海外作品で監督や現場の違いを感じましたか。


井浦:日本の監督と海外の監督の違いは意外とありません。それは、日本の中でも監督の数だけ違いがあるのと同じです。アメリカのマーク・マリオット監督も、マーク監督ならではの映画作りをしている。国内外問わず、監督によってみんな違うのだと実感しました。


現場の違いとしては、習慣として日本では当たり前だと思っていることが、アメリカでは当たり前ではないことがありました。例えば日本の現場では、どんなに大作でも食事の際にケータリングを毎日やることはありません。食事の基本はお弁当で、たまには温かいものを食べようとケータリングになる日が時々あるくらい。一方で『東京カウボーイ』の現場では、撮影部、照明部、衣裳部、メイク部などと同じように、ケータリング部が存在しました。モンタナでの撮影期間中は、ケータリングスタッフがスタッフ・キャスト皆の栄養管理をしっかりやってくれる。毎日の栄養バランスを考えて、昼食はパワーがつくようにお肉や野菜をたくさん出してくれると、その分夜は少し軽めにするとか、また、撮影が遅くなったときは、撮影後に自分の部屋に戻って食べられる夜食を作ってくれる。温かいパニーニなんかを包んでくれるんです。栄養のバランスをコントロールしてくれるチームが、技術チームと同じように組み込まれている。すごく大事なことだと思いました。そこは日本との大きな違いでした。


おそらく、日本は予算を削るときに食事などから削っていくのでしょうね。そのあたりの価値観が違うのかもしれません。「ケータリングは高いからお弁当で」と先輩から学ぶと、それが習慣になってしまう。予算が削られたとしてもケータリングは削らないという習慣を、日本でも取り入れることが出来れば、と。現場は大変な肉体労働なので、そこで食事を楽しむ時間がちゃんと確保されていれば、元気も出るしずいぶん違ってくるだろうと思いました。




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