自宅で撮影するという条件
Q:違法風俗に気付き始める隣人が面白かったです。このエピソードを並行させた狙いがあれば教えてください。
山内:違法風俗の話だけだと弱かったので、“世間の目”のような、コンプライアンスの象徴があった方が面白い。ただそれでも、この家から離れた撮影場所は作りたくなかった。それですぐに、これは隣の家だなと。当然、隣の家が貸してくれないと撮影できないのですが、とにかく脚本を書いてから交渉していきました。
Q:交渉はうまくいったのですね。
野上:監督の妹が昔からこのあたりに住んでいて、周囲の皆さんのことをよく知っているんです。それで彼女に動いてもらい、貸していただけることになりました。お隣はカフェのような営業をされていたのですが、少し飾り込んで部屋に見えるようにしてから撮影させてもらいました。
『アジアのユニークな国』©『アジアのユニークな国』製作委員会
Q:違法風俗の描写ではR18+指定ならではの表現もありますが、しっかり描いているからこそ伝わってくるものがありました。
山内:前作も同じ寝室でベッドシーンを撮りましたが、いわゆるセックスシーンは無かったんです。今回はセックスシーンが多かったのですが、馴染みの役者さんばかりでしたし皆さん慣れていましたね。岩谷健司さん(曜子の客役)はピンク映画にもよく出ていましたから。
野上:今回は岩谷さんが先生のようで、前貼りのことなどいろいろ教えてもらいました。動きに関しては殺陣みたいな感じもありましたね。
山内:前回も岩谷さんがいないシーンで前貼りを使いましたが、大きさによっては撮影し辛くなる。結構難しいんです。映っちゃうと消さなきゃいけないし。そういう反省点を踏まえての今回の撮影でした。前作からの学習は大きかったですね。こういったシーンだけではなく、エキストラのこととか、撮影のやり方とか、要所要所で前回の経験が役に立ちました。人間って学習するものだなと。
野上:前回は通行人を止めずに撮っていました。いろんなものが映り込んでいたのですが、「自主映画ってこういうものなのかな」と。でもやっぱり気になったので、今回は人も車も止めさせてもらった上で撮影しました。制作部のスタッフもたくさん来てくれたし、短くコンパクトにやった撮影だったので、そんなに大変ではなかったですね。必要でないものは映さない方がいいんだなと、学習した結果です。