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『アジアのユニークな国』山内ケンジ監督 撮影条件から生み出す物語【Director’s Interview Vol.500】

『アジアのユニークな国』山内ケンジ監督 撮影条件から生み出す物語【Director’s Interview Vol.500】

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意識せざるを得ない、エリック・ロメールとホン・サンス



Q:前作に引き続き、配給・宣伝はスターサンズです。


山内:亡くなった河村光庸さん(スターサンズ代表)とは懇意にしてもらっていて、河村さんは僕の舞台もよく観に来てくださっていました。『友だちのパパが好き』を気に入ってくれて、「ぜひ一緒に何かやりましょう」と。それで『夜明けの夫婦』の配給・宣伝を河村さんがやってくれることになったのですが、公開前に河村さんが亡くなってしまった。この話も無くなってしまうかと思いましたが、スターサンズ自体は継続することになり、今でもご一緒させてもらっています。


野上:ご近所さんということもあって、私は河村さんの奥様とも仲良くさせてもらっていました。それで今回の脚本ができた段階で一度相談に行ったんです。実名が色々と出てくる脚本だったのでいくつか不安要素もあったのですが、スターサンズの今の社長さんは弁護士ということもあり、それも含めて相談に行ったんです。その流れもあって、今回も宣伝・配給をやっていただけることになりました。



『アジアのユニークな国』©『アジアのユニークな国』製作委員会


Q:喜劇として作られてはいますが、タイトルや内容からそこはかとない社会批評も感じます。意図したものはありますか。


山内:前作は在日のことなど社会的な要素がいっぱい入っていたので、今回はその辺は絞ったつもりです。社会的なことは、どのくらい言うかがすごく難しい。演劇でもそうですが、社会的なことを前面に出すものって何だかちょっと煙たい。そうなるのは避けたいなと。曜子は政治や国際問題のことをずっと話していて、そういう正義感みたいなことが徹底している人ですが、一方で違法風俗をやっていたりして、何だかすごく矛盾している。でも彼女の中では社会的な意識の比重が大きくて、それを発露させること自体が面白く、大事なところでもある。その辺は鄭亜美さん演じてくれたからこそ、嫌な感じにはならなかったのだと思います。


Q:影響を受けた好きな映画監督や映画を教えてください。


山内:いつも最初に言っているのはルイス・ブニュエルなんです。でも最近はホン・サンスをすごく意識しています。もちろんそれはエリック・ロメールからの流れなのですが、ミニマムな映画でなるべくカットを割らずに会話を多くしていくと、どうしてもロメールやホン・サンスになってしまう。そのままやっちゃうと真似になるので、それを真似にしないようにするにはどうしたら良いか。会話が多い映画をインディーズで作るときは、避けられないテーマですね。




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監督/脚本:山内ケンジ

劇作家・映画監督・CMディレクター。演劇では城山羊の会を主宰、『トロワグロ』(15年)第59回岸田國士戯曲賞、『温暖化の秋~HotAutumn』(22年)第74回読売文学賞戯曲シナリオ部門を受賞。最新作は『平和によるうしろめたさの為の』(下北沢B1・24年)。映画は、『ミツコ感覚』(11年)『友だちのパパが好き』(15年)『At the terraceテラスにて』(16年)『夜明けの夫婦』(22年)、最新作は『アジアのユニークな国』(25年)。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成





『アジアのユニークな国』

6月28日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開

配給:スターサンズ

©『アジアのユニークな国』製作委員会

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