1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. カンヌも認めた若き巨匠、濱口竜介監督の映画術とは『寝ても覚めても』【Director’s Interview Vol.8】
カンヌも認めた若き巨匠、濱口竜介監督の映画術とは『寝ても覚めても』【Director’s Interview Vol.8】

カンヌも認めた若き巨匠、濱口竜介監督の映画術とは『寝ても覚めても』【Director’s Interview Vol.8】

PAGES


tofubeatsとの出会い



Q:tofubeatsさんの音楽もとても印象的でした。tofubeatsさんが参加されたきっかけは何だったのでしょう。


濱口:前作『ハッピーアワー』は神戸で撮影したのですが、tofubeatsさんも神戸出身で、神戸在住のアーティストなんです。ある日tofubeatsさんが「変な映画やってるな」って映画館に入ったら、それが『ハッピーアワー』だったと(笑)。その『ハッピーアワー』、面白かったというツイートを彼がしてくれて、そのツイートを見た関西の編集者の方が、安田謙一さん(神戸出身の文筆家)も交えた、3人の鼎談を企画してくれたんです。それがtofubeatsさんにお会いしたきっかけですね。


 お会いした時は、とってもクレバーでまっとうな人だなっていう印象がまずありました。それ以来、音楽自体も愛聴するようになったんですが、映画音楽にっていうことまでは、全然考えていませんでした。




 その後、今回の映画音楽についてプロデューサー陣と相談していたのですが、なかなかこれだっていう一致点が見つからない。そんな時に、江本君というアシスタントプロデューサーが、ふと「tofubeatsとかどうですか?」って言ってくれて、なるほど、「全然頭になかったけどtofubeats、すごくいいと思う!」となったんです。映画音楽を作ってもらうっていう発想は全然なかったのですが、以前の鼎談の後から、tofubeatsさんのアルバムを結構聞くようになっていて、とてもいいなと思っていたので、彼がやってくれるんだったら、それは意外にいいかもと思ったんです。


 それで、ご本人に相談したら快諾していただけて、お願いすることになりました。クランクイン前に方向性のお話をして、主題歌に関しても、「映画のラストに出てくる川が2人を見てるみたいな、そういう心持ちで作ってもらっていいですか」という感じで言ったら、クランクインして数日で『RIVER』っていう曲が上がってきました。これが本当にいい曲だったんです。そのことによって、ラストシーンのイメージが固まり、そこに向かって撮っていくようにもなりました。



Q:今回は初のカンヌで、しかも「いきなりコンペティション部門に選出という、ものすごい快挙なのですが、現地の評価はどうでしたか?


濱口:現地の星取り表で言うと、平均点ぐらいの点が出たのですが、結構振幅がありました。嫌な人は、すごい嫌なんだなっていう感じもしたし、とてもはまっている人は、はまっているっていう感じのレビューが多かったと思います。だから好き嫌いがある程度、はっきり分かれたっていう印象ですかね。


Q:それでも前提としては、コンペ部門に出てる時点でかなりの評価が付いてますよね。


濱口:ありがとうございます。


Q:では最後に、このインタビューを読んでくださった皆さんにメッセージを。


濱口:この映画は社会的な側面なども含んでいますが、生粋の恋愛映画、エンターテインメントの映画だと思うので、恋をしたことのある全ての人に、是非見ていただきたいですね。これまでの恋愛経験を反映しながら見てみてください。



『寝ても覚めても』を今すぐ観る





監督 濱口竜介

1978年12月16日、神奈川県生まれ。2008年、東京藝術大学大学院映像研究科の修了制作『PASSION』がサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスに出品され高い評価を得る。その後も日韓共同制作『THE DEPTHS』が東京フィルメックスに出品、東日本大震災の被害者へのインタヴューから成る『なみのおと』『なみのこえ』、東北地方の民話の記録『うたうひと』(共同監督:酒井耕)、4時間を超える長編『親密さ』、染谷将太を主演に迎えた『不気味なものの肌に触れる』を監督。15年、映像ワークショップに参加した演技経験のない女性4人を主演に起用した5時間17分の長編『ハッピーアワー』を発表し、ロカルノ、ナント、シンガポールほか国際映画祭で主要賞を受賞。一躍その名を世に知らしめた。自らが熱望した小説「寝ても覚めても」の映画化である本作で、満を持して商業デビュー。第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選ばれるという快挙を果たし、世界中から熱い注目を集めている。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。




『寝ても覚めても』 

9月1日(土)より、テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国公開 

配給:ビターズ・エンド、エレファントハウス

©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. カンヌも認めた若き巨匠、濱口竜介監督の映画術とは『寝ても覚めても』【Director’s Interview Vol.8】