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カンヌも認めた若き巨匠、濱口竜介監督の映画術とは『寝ても覚めても』【Director’s Interview Vol.8】

カンヌも認めた若き巨匠、濱口竜介監督の映画術とは『寝ても覚めても』【Director’s Interview Vol.8】


演技経験のない女性4人を主演に起用した5時間17分の長編『ハッピーアワー』では、ロカルノ、ナント、シンガポールほか国際映画祭で主要賞を受賞。一躍その名を世に知らしめた濱口竜介監督。自らが熱望した小説「寝ても覚めても」の映画化である本作で、満を持して商業デビュー。本作では何と第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選ばれるという快挙を果たす。世界中から熱い注目を集めている若き巨匠、濱口竜介監督に今回の映画制作について語ってもらった。


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原作小説を映画化するということ



Q:今回の映画は、監督のオリジナル脚本ではなく柴崎友香さんの小説が原作ですが、原作を映画化しようと思った理由を教えてください。


濱口:数年前に柴崎友香さんの小説をまとめて読む機会がありまして、その中でも特に面白かったのが「寝ても覚めても」でした。同じ顔の人が2人いて、その2人の間で心が揺れる女性というフィクション性の強い設定と、緻密でリアルな感じの日常描写が同居していることに、とても興味を惹かれました。


Q:柴崎さんの作品は、よく読まれるのですか。


濱口: 2012年ぐらいに自分の特集上映があったときに、「柴崎友香さんの作品は、濱口さんお好きじゃないかなと思います。」と、ライターの小林英治さんが勧めてくださって、それがきっかけで、読み始めました。確かに文体自体がとても視覚的で、カメラでものを見てるような感じだったので、読んでいて馴染みがよかったです。


Q:東出さん演じる麦と亮平が、それぞれ非日常と日常を象徴されているそうですが、まさに非日常と日常が、うまく映画に溶け込んでいるように感じました。その辺りのさじ加減は結構難しいかと思いますが、映画全体の構成やバランスはどのようにされたのでしょうか。


濱口:原作はとても面白かったので、大まかな構成の面では、ある程度原作に従いました。ただ、原作は視覚的な描写があるとはいえ、それは主人公である朝子の一人称の視点で書かれているんです。なので映画としては、カメラが見ているものとして、どう語っていくかということに気をつけました。いわゆるモノローグみたいなものはほぼ入れずに、出来事の積み重ねだけで構成したんです。




 映画の中で、ある出来事が起きる。それに対して観客が思いを巡らせる。その思いを巡らせてる間、落ち着いた時間があり、考えがまとまったあたりで、また次の出来事が起きる。その積み重ねで構成しています。


 普段われわれは無意識的に、出来事を日常とか非日常というカテゴリに分けていますが、この映画の中ではその全てが分け隔てなく現実に起こります。なので、日常と非日常が溶け込んでいるように感じて下さった方もいれば、違和感を感じた方もいるかもしれません。出来事をどう捉えるかというのは、ある程度、観客に任せています。


Q:映画では震災のシーンも出てきます。監督の過去の作品でも震災が取り上げられていますが、その辺は意識されているのでしょうか。


濱口:そうですね。日常、非日常の話で言うと、とても印象深かったことがありました。震災後の東北で、インタビュー中心のドキュメンタリーを撮っていたのですが、皆さんに話を聞くと「夢を見てるみたいだった」とか「映画を見てるみたいだった」とかの答えが返ってくるんです。目の前で実際に地震や津波が起きているんだけれども、その目の前に起きていることが実際の現実の出来事だと捉えられないんですね。




 震災が起きるまでの日本は、ずっと日常が続くっていう感覚があったと思うんです。このままずっと退屈な日常が続いていくんだと、多くの映画もそれが前提で作られていたような気がします。でも実際に震災が起こってしまって、日常っていうのは急に断ち切られることがあるんだと、昨日と今日というのは、全く別の日になってしまうことがあるんだということを、皆感じたのではないでしょうか。


 また、共同脚本の田中幸子さんが、ある程度社会的なものも配慮しながら書いてほしいという私のオーダーに応えて、震災を真っ向から取り扱ってきたんです。そのときは、これを扱っていいのかなという迷いもあったのですが、でもそれを取り扱うことは、この映画にとって、とても必然性があると思い直しました。それはやっぱり実際に起こったからです。



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