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観客がワクワクする楽しい映画にしたい!御法川修監督『母さんがどんなに僕を嫌いでも』【Director’s Interview Vol.12】

観客がワクワクする楽しい映画にしたい!御法川修監督『母さんがどんなに僕を嫌いでも』【Director’s Interview Vol.12】


ワクワクする映画を作りたい!



Q:映画では、虐待・ネグレクトといった、かなり社会性を持ったテーマも取扱っています。

 

御法川:闇に埋もれた存在に光を当てることこそ、映画の力だと信じています。ただ、映画は世の中にメッセージを伝える手段ではないと、僕は思っています。言葉で伝えられるメッセージなら、政治家になればいい。映画に役割があるとすれば、言葉が追いつかないような、やむにやまれぬ人の想いを浮き彫りにすることなんだと思っています。


 ストーリーやテーマは言葉で記述できますけど、それを説明したところで、映画の本質を語ったことにはならないのになって、監督である僕はいつも歯がゆい気持ちでいます。本作もネグレクトの問題告発の「ために」作ったのではなく、人間の掴みきれない複雑さを描くことで、観客の倫理観を揺さぶってみたかったんです。


 たとえば、大ヒットしている『ボヘミアン・ラプソディ』を観たら、アルバムで音楽を聴いていた時よりもずっと深く「クイーン」というロックバンドを好きになりますよね。知らなかった楽曲も聴いてみたい、もっと彼らについて知りたいって思うはずです。やっぱり映画って「MOVIE」ですから、スクリーンに映る登場人物が駆け回り、感情をあらわにして躍動する、それを観た人たちの心も揺さぶられる、互いに共振し合う運動を促すのが映画だと思うんです。とにかくワクワクするほど面白い映画を作りたいんです。自分としては、もうその一点なんです。



映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』撮影風景


 おもしろい映画を観て心がざわめき立ち、躍動する肉体や愛くるしい表情に魅せられたときに初めて人は、作品の中に潜むテーマを身に沁みて実感できるんじゃないでしょうか。人って、自分の頭の中の知識や経験に支配されているので、「わかる、わかる」ってところだけに共感して、自分に理解できないところは平然と無視してしまう残酷さがあります。映画の力って、「良い/悪い」の二者択一で解決できない複雑さを体験することだと思うんです。この映画も、深刻な社会問題を扱っているので、そぼくに「おもしろい」と感じることを不謹慎だと思う人がいるかもしれません。でも、急に真面目になるのもナイーブすぎる気がするんですよね。ただスクリーンを見つめて、けなげな主人公の姿を愛おしく感じてほしいんです。この映画を観ることで、人を慈しむ気持ちを芯から実感してほしい。その実感を確かめられたら、あらゆる問題に立ち向かう力になると信じています。


Q:なるほど、やっぱりワクワクするほど面白い映画を見たいですよね。監督の映画に対する愛を強く感じます。 


御法川:映画って、目に見える画と、耳で聞こえる音、この2つの即物的なものだけを組み合わせて物語る表現です。当たり前に思われるでしょうけど、これが難しいんです。たとえば、原作に書かれてある「自分をさらけ出すこと」は、画で表現できない人間の心理なんですね。目に見えない心理を、具体的な行動や事件に置き換えて物語る表現が映画であって、原作にあるセリフやストーリーを単に絵解きする「再現」や「動画」とは違うものなんです。




 映画の終盤で、主人公が母へ想いを伝えるためにハチャメチャなサプライズをしかけます。予告篇の印象からは想像もつかないユーモラスな姿は、さらけ出すことを具現化した人間の行動なわけです。おかしさとせつなさが同時に生まれる、映画ならではのアクションだと思っています。笑いたいのに笑えないって泣き出す姿や、大人が童謡の「ぞうさん」を口ずさむ滑稽な場面などは原作にありませんが、原作のハートの部分を具現化するために考えぬいた表現なんですね。画面に映る衣裳の色彩も、聞こえる物音ひとつも、色や光や音が呼び覚ます感覚ぜんぶが映画です。その全てを体験してもらえたら嬉しいんですけどね。カメラに偶然映ってしまったニュース映像とは違うものだということを、観る方々と改めて共有したいんです。僕のような馬の骨監督は、もっともっと映画の奥ゆきを極めたくて無我夢中です。



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