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映画を作るときにまず考えるのは「場」なんです『希望の灯り』トーマス・ステューバー監督【Director’s Interview Vol.25】

映画を作るときにまず考えるのは「場」なんです『希望の灯り』トーマス・ステューバー監督【Director’s Interview Vol.25】

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スクリーンに映えるフランツ・ロゴフスキの顔



Q:寂しさや温かさなど、余韻の残る感情豊かな映画でした。この空気感を出すには、俳優の雰囲気、セリフの間、場所の醸し出す空気など、色々なものが必要になってくると思うのですが、これらは綿密に脚本に落とし込まれていたのでしょうか。それとも、現場で感じたものを切り取っていったのでしょうか。


トーマス:今回はすごく余白のある脚本であったのは確かでして、全て細かく決めていたわけではありません。もちろん準備万端で撮影には臨むのですが、実際に撮影現場ではどんなことが起こるか分かりません。思ったとおりになる時もあれば、全然違った形になる時もあり、それがかえって良かったこともあります。それが映画のマジックですよね。




 撮影前にしっかり時間を取って、役者とも色んなことを話し合います。何かアイデアが出たら積極的に採用したいと思っていますし、皆で一緒にじっくり作っていきたいんです。今回はメインキャストの3人に、スーパーで実際に2週間ほど仕事をしてもらいました。そして僕も含めてメインキャスト全員がフォークリフトの免許を取っているんです。だからもし映画監督として食べていけなくなっても、フォークリフトの仕事はできますよ(笑)。


Q:淡々と進む物語にもかかわらず、主人公クリスティアンの成長の機微がしっかりと捉えられていました。クリスティアン役のフランツさんとはどんなことを話して、そのキャラクターを作っていったのでしょうか。


トーマス:これはもう、フランツによるところが大きいですね。フランツとは今回初めて組んだのですが、彼はテレビにはほとんど出ていなくて、映画出演がメインの役者なんです。しかもインディーズ系のアドリブが多い作品で、画面中を走り回っている役が多かった。彼のそんな身体性がすごく映画向きだと思ったんです。


 特に彼の顔は映画館の大きなスクリーンに映えるんですよ!ただし、今回は文学をそのまま映画化する作品ゆえ、ある種の正確無比さが必要なので、アドリブはあまり必要としなかったんです。その辺のアプローチはちゃんと理解してもらえるよう、事前に本人としっかり話をしました。




 また、おっしゃるように、この物語にはそんなに大きな変化があるわけではありません。よく言われることですが、「物語」には新しいものなんてありません。どの物語もすべて何かのタイプに属していて、それを繰り返しているだけです。


 今回の場合は、ボーイ・ミーツ・ガールという非常に典型的なラブストーリーを、自分なりにリアルな人生に寄せて描こうとしました。そのために必要だったのが、まさにフランツの顔だったんです。彼の顔は不思議とずっと見てられるんですよね。映画の冒頭で観客と彼との出会いがうまくいけば、映画の間中ずっと彼に付いてきてもらえると思ったんです。



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