物語に潜むメッセージ
Q:フィクションとドキュメンタリーの”いいとこ取り“に、劇映画ならではのテーマやメッセージを設定したわけですね。
レイトン:マイケル・ムーアのように、ある程度主観的というかキャンペーン的なドキュメンタリーもあるので、そこにはメッセージが存在すると思いますが、私の場合は、過去の出来事を切り取るようなスタイルをとってきました。そこではメッセージというよりは、“伝えるべきストーリーを伝える”という目的があります。
本作でも同様に状況をすくいとり、物語を伝えるということをやっていますが、違うのは、おっしゃるように、そこにメッセージがあるということです。
それは事件を起こした学生たちが、その当時アイデンティティを追い求めていたりだとか、大切な何かを得なければいけないとか、特別な人間になりたいというプレッシャーを感じているといった、人間性を露わにした部分です。事件の背景をひもといていくのと同時に、そこにある若い時代の普遍的な感情を伝えていけたらと思いました。
Q:そのあたりの人間性の描写については、監督独自の解釈を加えた飛躍があるのでしょうか。
レイトン:本編で本人たちが語っているように、当時の彼らは、大学図書館所蔵の貴重な書籍を盗むことで、自分にはないアイデンティティを求めていたというのは確かで、それは本物の体験に基づいているものです。事件における彼らの本質的な部分については、私はフィクションを加えることはしませんでした。