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『女優霊』『リング』を生み出した高橋洋。『霊的ボリシェヴィキ』で切り開いた恐怖表現の新境地とは?【Director’s Interview Vol.32】

『女優霊』『リング』を生み出した高橋洋。『霊的ボリシェヴィキ』で切り開いた恐怖表現の新境地とは?【Director’s Interview Vol.32】

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今も世界の映画に影響を与えるJホラー



Q:高橋さんをはじめ、多くの監督が90年代から2000年代にかけて作り上げてきたJホラーの世界観は、昨年話題となった『ヘレディタリー/継承』(18)にも影響を与えているのではないかと感じました。


高橋:主に前半ですよね。僕の作品に限らずJホラーを明らかに射程に入れた監督が作っているなというのは感じましたね。死んだおばあさんが丘の向こうに背中を向けて座っていて、周りに炎がチロチロと燃えている。ほんと山岸凉子が書いた漫画の一コマみたいで、この人相当研究していると感じました。 後半は黒魔術が前面に出てきて、日本人はついていけなくなってしまうんですが。


Q:『へレディタリー/継承』をはじめ、近年の海外ホラーはオカルトに回帰しているのではないかと感じますが、いかがですか?


高橋:そうですねオカルトと言っても、物理的に攻めてくるんじゃなくて内面的にじわっとくるもの。魔女を取り上げる時も、昔のような邪悪な存在として分かりやすく攻撃してくるわけではなく、 魔女として「居る」こと自体がヤバいと。今、海外のホラー映画は元気がいいですよね。幽霊系ではないですけど、『ゲット・アウト』(17)などはホラーというジャンルを借りながら、今までの黒人差別表現じゃなくて、オバマを支持しているリベラル層の中に内在する差別を描いている。 そこまで“えぐれる”というのは面白いですよね。




Q:ホラーというのは様々なテーマを託せる表現形式ということですね。監督の次の企画は進んでいるんですか?


高橋:今3本ぐらい進行しているんですけど、どれもまだ発表できないんです。でも3本とも限りなく恐怖映画に近いものです。『霊的ボリシェヴィキ』もそうですけど、今までは低予算で実験的なとんがったことをやっていたので、そろそろ僕は脚本家に戻って監督さんとのチームワークの中で新しいことをやろうと。アメリカが『ゲット・アウト』を作ったみたいに、日本から発信できるホラーがあるということを証明したい。


Q:楽しみですね。最後に、『霊的ボリシェヴィキ』をこれからご覧になる方にメッセージをお願いします。


高橋:本当に インディペンデントの映画で公開規模も小さかった作品です。でも自分自身、さらにキャストやスタッフも、今までのホラー映画にない革新的な表現が出来るんだということを実証した作品だと自負しています。是非だまされたと思って見てほしい。ブルーレイになったことで、部屋で見られるようになったので、みんなで集まってみてもいいんですけど、できれば一人で真っ暗にしてみるといいんじゃないかなと。



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脚本・監督:高橋洋

1959年生まれ。森崎東監督のテレビ作品『離婚・恐婚・連婚』で90年に脚本家デビュー。『リング』『リング2』(98、99 中田秀夫)、『リング0 バースデイ』(00 鶴田法男)が大ヒットを記録する。他の脚本作品に『女優霊』(95 中田秀夫)、『インフェルノ蹂躙』(97 北川篤也)、『復讐 運命の訪問者』『蛇の道』(96、98 黒沢清)、『発狂する唇』『血を吸う宇宙』(99、01 佐々木浩久)、『おろち』(08 鶴田法男)、『予兆 散歩する侵略者』(17 黒沢清)など。04年、監督作『ソドムの市』が公開。以後『狂気の海』(07)『恐怖』(09)『旧支配者のキャロル』(映画芸術ベストテン4位/12)と監督作が続く。最新作は、『霊的ボリシェヴィキ』(17)。著書に「映画の魔」(青土社)、稲生平太郎との共著「映画の生体解剖-恐怖と恍惚のシネマガイド」(洋泉社)、脚本集「地獄は実在する」(幻戯書房)がある。愛知淑徳大学および映画美学校にて若手育成に励んでいる。



取材・文: 稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)など。最新作は6月19日(水)放送『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)。







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(C)2017 THE FILM SCHOOL OF TOKYO

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