食器はろくろで手びねり。作り方まで本物志向
兵十の家の土間にさりげなく置かれている、斧や鎌、ナタなどの農具にもこだわりが詰まっている。刃は鉛の塊を削り出し、金槌で叩いて作る。刃物を鍛える際についた槌跡を再現するためだ。この一手間で、グッと本物らしくなる。
食器や水がめなどは、手回しろくろで手びねりした。材料のオーブン粘土は、焼いて磨くとツヤが出て、使い込まれた陶器の表情が出る。
陶器類を担当したスタッフは以前、陶芸の窯元に勤めていた経験があるそうだ。そうでなければ、直径3センチほどの小ささでこれほど洗練されたシルエットを出すのは難しいだろう。
ときには自然物をアレンジして
ごんが兵十の家に届ける松茸や栗。松茸はカサの部分を粘土で、軸を木で作った。松茸の軸部分のケバだちを表現するには、木を粗くひっかいた質感がぴったりだった。大根やさつまいもの葉は実物の草を乾燥させたものだ。イガグリは、芯に実物の栗のイガの針を一本一本植えつけて、ごんの小さな手のひらに収まるようスケールダウンさせた。