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『南瓜とマヨネーズ』映画監督に愛され続ける、寡作の天才漫画家「魚喃キリコ」に注目!

(C) 魚喃キリコ/祥伝社・2017『南瓜とマヨネーズ』製作委員会

『南瓜とマヨネーズ』映画監督に愛され続ける、寡作の天才漫画家「魚喃キリコ」に注目!

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どうしてもツチダを演じたかった臼田あさ美



 魚喃キリコの描くコミックは余白が多く、背景も省かれ、登場人物以外は白抜きされることが多く、特定の場所を指したのものではないからこそ、読者がその世界に入り込む余白が大きい。とはいえ、映画にするにあたって、その余白をそのままにすることはできないので、冨永監督は様々な肉付けを試みている。素晴らしい改編となったのがツチダの職業。原作ではアパレルのショップ店員だったが、映画ではライブハウスで働く設定になっていて、彼女が昨今のライブ事情、インディーズのバンド事情に精通するからこそ、せいいちの現状にとめどない不安を抱えることに説得力を与えている。また、裏方に徹し、地味な扮装で、機材のチェックをし、ライブハウスの会場に目を配るツチダ役の臼田あさ美の佇まいがカッコいい。原作では偶然に導かれ、どこか逃げるように、昔の恋人ハギオとの再会にのめりこむツチダだが、臼田が演じることで、ツチダの意思によってハギオとの再会を手繰り寄せるように見える。



『南瓜とマヨネーズ』(C) 魚喃キリコ/祥伝社・2017『南瓜とマヨネーズ』製作委員会


 冨永監督はツチダ役を選ぶにあたって、とにかく魚喃の描く画に似ているという点を重視し、そこで臼田に行きついたという。もともと原作を愛する臼田もツチダ役を熱望したが、製作の諸条件がなかなか整わず、何年か企画がストップしたままだった。そこで臼田が『色即ぜねれいしょん』で組んだプロデューサーに話を持って行ったことで、一気に話が進んだという。太賀演じるせいいちにはどこか姉のように母のように過干渉になってしまう女心を演じ、オダギリジョー演じる昔の恋人ハギオには、昔の弱い女とは違うクールな今を見せつける。弱さと強さ、意地と純情、ずるさと切なさ。相反する感情でゆらゆらと揺れる30目前の女性の不安定さを臼田は惜しみなく見せてくれる。2017年の彼女は石川慶監督の『愚行録』、鄭義信の舞台「すべての四月のために」でも多面的な女性を演じていたが、まさに脂ののっている時期にこの『南瓜とマヨネーズ』に巡り合ったと言えるだろう。



文: 金原由佳(きんばら・ゆか)

映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」「装苑」「ケトル」「母の友」など多くの媒体で執筆中。著書に映画における少女性と暴力性について考察した『ブロークン・ガール』(フィルムアート社)がある。『90年代アメリカ映画100』(芸術新聞社)、『アジア映画の森 新世紀の映画地図』(作品社)などにも寄稿。ロングインタビュー・構成を担当した『アクターズ・ファイル 妻夫木聡』、『アクターズ・ファイル永瀬正敏』(共にキネマ旬報社)、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワネットワーク)などがある。



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『南瓜とマヨネーズ』

配給:S・D・P 

(C) 魚喃キリコ/祥伝社・2017『南瓜とマヨネーズ』製作委員会

原作:魚喃キリコ『南瓜とマヨネーズ』(祥伝社フィールコミックス)


※2017年11月記事掲載時の情報です。

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