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女の子に話しかけるヒマもないほど、パンク・ロックが楽しすぎる!『パーティで女の子に話しかけるには』

女の子に話しかけるヒマもないほど、パンク・ロックが楽しすぎる!『パーティで女の子に話しかけるには』


主人公男子の自宅部屋の壁は、パンク・シーンをめぐるロジカルな系譜図!



 実はまだ冒頭シーンの話しかしていないが、主人公エンの自宅部屋の壁ひとつ取っても、パンク・ロックへの深い愛情と理解が明確に伝わってくる映画なのだ。しかも単に情報量を詰め込んでいるだけでなく、結構ロジカル。しっかりした理論武装がいちいち窺える。


 例えば初期ロンドン・パンクをめぐる補助線。ドキュメンタリー映画『ギミー・デンジャー』(2016年/監督:ジム・ジャームッシュ)でも詳しく紹介されたイギー・ポップのバンド、ザ・ストゥージズ(デトロイト出身)や、ラモーンズ(ニューヨーク・クイーンズ出身)はアメリカのバンドだが、ロンドン・パンクに多大な影響を与えた先駆者としてむしろイギリスで先に高く評価された。あと先に触れた名盤『十代の暴走』(原題“TEENAGE DEPRESSION”)のエディー・アンド・ザ・ホット・ロッズは、英エセックス出身のバンドだが、パブ・ロックとパンク・ロックの橋渡しとなった存在としてよく知られている。パブ・ロックとはドクター・フィールグッド(やはり英エセックス出身)など、シンプルなロックンロールを信条とするガレージライクなバンドやミュージシャンの一群を指す。ロンドン・パンク前夜の1970年代のUKロックとして極めて重要なシーンだ。




 ドクター・フィールグッドに関しては、日本のミッシェル・ガン・エレファントがよくリスペクトを示していたので、その時に知った人も多いのでは? ちなみにエディー・アンド・ザ・ホット・ロッズは、人気絶頂のセックス・ピストルズのライヴ・サポートを務めた時、ピストルズの機材を壊して険悪になったという愉快なゴシップもある。彼らは2000年に再結成して現在も活動中。


 あとエンの部屋の壁で気になるのは、ザ・スリッツのバンドロゴだけのピンナップだ。ザ・スリッツは初期パンクとしては珍しいガールズ・バンドで、フェミニズム的な色合いや攻撃性を打ち出していた。現在だとサヴェージズなどに受け継がれているようなスタンスと言える。ちなみにカリスマ的なヴォーカルのアリ・アップ(この映画でもさりげなくキーパーソンとなる)は2010年に48歳で亡くなってしまったが、彼女の母親ノラは、元セックス・ピストルズのジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)の長年のパートナーである(法的には婚姻関係を結んでいないらしいが)。


 しかしエンのような素朴キャラの童貞男子が、ザ・スリッツを他の王道パンクスたちと並べて崇めているのはちょっと不思議な気もする。そこに絡めて思うことは、劇中音源として、ザ・ホモセクシャルズというマニアックかつ当時としては尖りまくったネーミングのバンドの曲が使用されていること。筆者は不勉強ながら彼らの曲を聴いたことがなかったため、映画を鑑賞したあと『The Homosexuals’ CD』というベスト盤のユーズド品をAmazonで購入。映画の中盤で流れる「SOFT SOUTH AFIRICANS」は収録されていたが、もう一曲クレジットされていた「FLYING」は確認することができなかった。う~む、まさかこのトシになって、パンクの未知なる扉を開けることになろうとは……。


 また英語版ウィキペディアによると、1977年の時点では「The Rejects」(ザ・リジェクツ)というバンド名で活動しており、ザ・ホモセクシュアルズとなったのは1978年から(1985年に一度解散し、2003年に再結成してからは現在も活動中らしい)。「SOFT SOUTH AFIRICANS」も1978年の音源だ。


 となると、1977年が舞台の映画に彼らの曲を使うのは正確さを逸するわけだが、それでもあえて踏み切ったのは、そこにジョン・キャメロン・ミッチェルのジェンダー意識が反映されているからに違いない、と思えるのである。


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