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『パーティで女の子に話しかけるには』女の子に話しかけるヒマもないほど、パンク・ロックが楽しすぎる!

© COLONY FILMS LIMITED 2016

『パーティで女の子に話しかけるには』女の子に話しかけるヒマもないほど、パンク・ロックが楽しすぎる!

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周辺事情や隣接する音楽シーンにもうんちくが広がるマニアの世界



 とまあ、こういうオタクの与太話を、主人公エンはいつもツルんでる悪友ふたりと日常的に繰り広げているわけだ。彼らボンクラ三人組は自分たちでパンク同人誌なども作っており、ザ・クラッシュについて「メジャー(CBSレコード)と契約したら終わりだよな」「死んだも同然だ」などと生意気な批判をかましている。この会話、『アメリカン・グラフィティ』(1973年/監督:ジョージ・ルーカス)の中の有名な台詞「バディ・ホリーが死んでロックンロールは終わった」を連想する内容だ。


 このボンクラ三人組のうち、特にジョン(イーサン・ローレンス)という太めの彼が『ハイ・フィデリティ』(2000年/監督:スティーヴン・フリアーズ)のバリー(ジャック・ブラック)を彷彿させるコアな音楽マニア。ノイ!やファウストといったクラウト・ロック(ドイツの前衛系)、ペル・ウブ(アメリカの前衛バンド)などについてのうんちくも傾ける。もはや初期パンクの域を超えて、ポスト・パンク/ニューウェイヴへの影響関係にまでコンテクストが広がっているようだ。



『パーティで女の子に話しかけるには』© COLONY FILMS LIMITED 2016


 また三人組行きつけのライヴハウスのステージに登場するのが、劇中バンドの「ディスコーズ」。そのマネージャーを務める姐御キャラのボディシーア役は、あのニコール・キッドマン。彼女は『ラビット・ホール』(2010年)に続いてのジョン・キャメロン・ミッチェル監督作への出演だ。今回の役作りというか、ルックス&ヴィジュアルは、おそらく「パンクの母」の異名を持つニナ・ハーゲンがイメージソースだろう。思えばニナ・ハーゲンは旧東ベルリン出身で、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の主人公ヘドウィグと同郷なのだ。


ジョン・キャメロン・ミッチェルが吐き出した奇跡!『ヘドウィッグ・アンド・アングリーインチ』


 そしてボディシーアというキャラクターは、かつてヴィヴィアン・ウエストウッドのもとで働いていたという設定。つまりは彼女、セックス・ピストルズ生誕の地ともなったキングスロードの伝説のパンク・ブティック「SEX」の店員だったってことだろうか!?


……と、ここまで書き進めてきて一息ついたので、あとは鑑賞してからのお楽しみ!ってことでオチをつけようと思ったのだが、ちょっと待て自分! まだヒロインのザン(エル・ファニング)のことを全然書いていない! うわ~っ、本作って音楽系の映画である前に、異色のボーイ・ミーツ・ガールを軸にした恋愛映画なんだよね。でもまあ実際、女の子に話しかけるヒマもないほど、パンク談義三昧で遊べる一本なんです、はい。



文: 森直人(もり・なおと)

映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「TV Bros.」「メンズノンノ」「キネマ旬報」「映画秘宝」「シネマトゥデイ」などで定期的に執筆中。



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映画公式サイト: http://gaga.ne.jp/girlsatparties

配給:ギャガGAGA★

© COLONY FILMS LIMITED 2016


※2017年12月記事掲載時の情報です。

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