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『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』ジョン・キャメロン・ミッチェルが吐き出した奇跡
2017.10.31
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』あらすじ
自由と引き換えに性転換をして女としてアメリカに来たヘドウィグ。やがてロッカーを夢見るとトミーと恋に落ちた彼は、自分の持つ音楽やロック魂を全て教え込む。だがトミーは裏切り、全曲を盗んでメジャーデビュー。ヘドウィグの曲を歌いビルボードNo.1ヒットを飛ばしたトミーはコンサートを開始する。傷心のヘドウィグも彼を追いかけ、全米各地を巡業。ある日ヘドウィグはトミーと再会するが・・・。
Index
2017年10月、日本で初披露されたオリジナル“ヘドウィグ”の生歌
2017年10月。ジョン・キャメロン・ミッチェルが来日し、渋谷の東急シアターオーブと大阪のNHK大阪ホールで行われた公演「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ SPEICIAL SHOW」に出演した。追加公演も含めてわずか5回のショーチケットは争奪戦となり、販売開始するや瞬く間にソールドアウトとなった。
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』は、1998年にニューヨークのオフブロードウェイで初演されたロックミュージカルで、同年のオビー賞を受賞するなど高く評価される。2001年には早くも映画化されて、世界各地でカルト人気を得た。
今回の公演がファンにとって大事件だったのは、初演舞台の主演俳優兼クリエイターであり、映画版でも監督・脚本・主演を務めたジョン・キャメロン・ミッチェルが、日本で初めて“ヘドウィグ”としてパフォーマンスしたこと。映画や舞台で作品に魅了された日本のファンにとって、オリジナル“ヘドウィグ”を生で体験できる夢のステージだったのだ。
『ヘドウィグ~』は、冷戦下の東ベルリンに生まれ育った少年ハンセルが、杜撰な性転換手術を受けて女性とも男性とも言えない身体となり、アメリカに渡ってドラァグクイーンな装いのロックスター“ヘドウィグ”に変貌を遂げる物語だ。ハンセル少年は、駐留米軍のラジオ放送を通じてデヴィッド・ボウイやルー・リードなどの西側のロックの洗礼を受ける。ジェンダーの垣根を突き崩す彼らの音楽は、ハンセルにとって信仰となり、やがて“ヘドウィグ”という時代がかったグラムロッカーを創り上げるのである。
ヘドウィグが歌うオリジナル曲はすべて、ミッチェルと共同でミュージカルを創り上げたロックミュージシャン、スティーヴン・トラスクが作曲したもの。グラムロック的な要素は主にミッチェルの好みで、トラスクの音楽性はパンクロックに寄っていたが、バラードでも素晴らしいメロディを書く才能の持ち主だった。トラスクがこれほどの名曲群を生み出していなければ、『ヘドウィグ~』が20年にわたって人気を得ることはなかっただろう。