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『シカゴ』ハリウッドが認めるまで80年かかったピカレスクロマン

『シカゴ』ハリウッドが認めるまで80年かかったピカレスクロマン

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殺人罪で服役する2人のヒロインにはモデルがいた!



 大ヒットブロードウェイミュージカルを映画化した2002年の傑作『シカゴ』。殺人の罪で刑務所に入れられた女囚たちが(絶対にやってるのに)無実を主張し、スキャンダルで世間の注目を集めながら無罪放免を勝ち取ろうと奮闘する、身勝手な女たちのサバイバル劇だ。


 ブロードウェイミュージカルの映画化、という説明は決して間違っていないのだが、歴史を紐解いていくと事態はもう少しややこしい。『シカゴ』の物語は1924年にシカゴで行われた裁判から生まれた「シカゴ」という戯曲を下敷きにしており、ミュージカル舞台が生まれる以前に2度も映画化されているのである。


 では、元になった事件とは一体どういうものだったか。中心人物はレネ・ゼルウィガーが演じたロキシーのモデルになったビューラ・アナンという若い女性と、キャサリン・ゼタ=ジョーンズが扮したヴェルマのモデルになったベルヴァ・ガードナーというキャバレー歌手だった。


 ビューラ・アナンはケンタッキー州に生まれ、10代で早い結婚をするが、自動車整備工のアルバート・アナンと出会い、2人でシカゴに引っ越して2度目の結婚をする。ところがハリー・カルステットという愛人とも逢瀬を重ねるようになり、ある日、痴情のもつれからカルステットを射殺したとされている。まだ24歳の若さだった。




 ビューラは犯行の後、数時間繰り返し「フーラ・ルー」という曲のレコードを聴いていたという。「彼女の名前はフーラ・ルー、決して誠実でいられない娘」という歌詞はまるででき過ぎた悪い冗談だ。ちなみに劇中でロキシーがかけるレコードが「フーラ・ルー」に似ているのは製作チームのお遊びだろう。


 ビューラの主張は二転三転したが、身の危険を感じた上での正当防衛だと主張。夫のアナンが裁判費用を出してビューラを支えたことも、獄中から妊娠を公表して世の同情を集めたことも、無罪を勝ち取った後すぐにアナンと離婚したことも、すべて映画のロキシーと同じなのだから恐れ入る。


 ヴェルマのモデルとなったべルヴァには20歳年上の夫がいたが、ある晩、彼女の車の運転席で愛人だったウォルター・ロウという男の射殺死体が発見。車の床にはジンのボトルと拳銃が転がっていた。ベルヴァは映画の通りに「酔っていて何も覚えていない」という主張を繰り返した。


 獄中のベルヴァは、新聞記者に対してかなりぶっちゃけた発言をしている。「女にとって嫉妬で殺すほどの価値がある男なんていない、替わりはいくらでもいるでしょ。ジンと拳銃、一つだけでも厄介なのに、両方ともあったんだからとんでもないことになって当然じゃない?」


 ベルヴァの弁護士は「自殺の可能性も否定できない」と強弁して無罪放免を勝ち取る。この時に担当した2人の人物を元に生まれたのが、映画版でリチャード・ギアが演じたカネにがめつい敏腕弁護士ビリー・フリンである。



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