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ミュージカル嫌いにも配慮したミュージカル映画の傑作
第75回アカデミー賞で作品賞、助演女優賞など6部門に輝いた2002年のミュージカル映画『シカゴ』。禁酒法が敷かれていた1920年代の大都会シカゴを舞台に、痴情のもつれから殺人を犯して刑務所に入った二人のヒロイン、ロキシー(レネ・ゼルウィガー)とヴェルマ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)の仁義なきライバル関係と名声欲を描いたブラックコメディだ。
『シカゴ』予告
ミュージカルというジャンルには好き嫌いが多い。例えばタモリのような人気タレントがミュージカルが嫌いだと公言し、「なぜ普通に喋らずにいきなり歌い出すのか」と違和感を表明すると思わず頷いてしまう人も多いだろう。タモリの場合はそれが話芸にもなっているわけだが、ミュージカルアレルギーのある人たちの総意と言っても差し支えあるまい。
筆者はミュージカルの舞台も映画も好きだが、中にはキャラクターの気持ちを滔々と歌い上げられて白々しい気持ちになってしまう作品もある。そもそもミュージカルは一つの表現形式であって、その中に良し悪しがあって当然なのだが、映画『シカゴ』の大きな特徴は、前述のような“ミュージカル嫌い”が拒否反応を起こさないように細心の注意と工夫が凝らされていることだ。