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『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』ロックとポップと片割れ探し

© 2001 New Line Productions, Inc. © 2001 Fine Line Features. All rights reserved.

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』ロックとポップと片割れ探し

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『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』あらすじ

自由と引き換えに性転換をして女としてアメリカに来たヘドウィグ。やがてロッカーを夢見るとトミーと恋に落ちた彼は、自分の持つ音楽やロック魂を全て教え込む。だがトミーは裏切り、全曲を盗んでメジャーデビュー。ヘドウィグの曲を歌いビルボードNo.1ヒットを飛ばしたトミーはコンサートを開始する。傷心のヘドウィグも彼を追いかけ、全米各地を巡業。ある日ヘドウィグはトミーと再会するが・・・。


Index


“愛の起源”を歌い上げた屈指の名曲「オリジン・オブ・ラブ」



 ロックミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(2001)は、ミュージカルとしてもロックンロールの文脈においても名曲の宝庫だ。冷戦時代の東ベルリンに生まれた主人公“ヘドウィグ”が、雑な性転換手術で女性になりきることもできないまま、ケバケバしいメイクと衣装に身を包み、波乱に満ちた半生を赤裸々に歌に載せて語る。すべての楽曲は、“ヘドウィグ”を演じ映画版の監督も務めたジョン・キャメロン・ミッチェルのためにロックミュージシャンのスティーヴン・トラスクが書き下ろしたものだ。


 『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の映画は1998年の初演されたオフブロードウェイの同名舞台をもとにしているが、ミュージカル舞台になるまでには4年の歳月が費やされた。当時、トラスクはNYのドラァグクイーンショーのクラブ「スクイーズボックス」の音楽ディレクターをしており、デボラ・ハリージョーイ・ラモーンのようなロックセレブも出演していた。そのステージに、ジョン・キャメロン・ミッチェルが“ヘドウィグ”として登場。ブロードウェイで活躍する舞台俳優だったミッチェルが、本物のドラァグクイーンに混じって披露するパフォーマンスが話題となり、時間をかけてミュージカルという形に発展していったのだ。


 そしてトラスクが“ヘドウィグ”のために書いた最初の曲であり、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』という作品を象徴しているのが「オリジン・オブ・ラブ」だ。“ヘドウィグ”は、神話の時代にさかのぼり、かつて人間は二人一組の生き物で、神の怒りに触れて引き離されたのだと歌う。人間は、引き裂かれ、世界のどこかに散ってしまった片割れを探し求めるようになる、それが“愛の起源(オリジン・オブ・ラブ)”だというのである。


 映画の中では、エミリー・ハブリーが手がけた素晴らしいアニメーションによって語られるこの曲は、映画のラストで再び流れ“ヘドウィグ”の物語にひとつの決着をつける。


 どこかにいる自分の片割れを見つけ出せば、本当の自分が見つかるはず。このロマンチックだが悲痛な探索が“ヘドウィグ”の物語といえる。そして“ヘドウィグ”の願いがシンプルであればあるほど、この映画は性差も性的嗜好も超えて、誰もが“自分も同じ”だと感じられるのだ。




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