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『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』ロックとポップと片割れ探し

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』ロックとポップと片割れ探し

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“ヘドウィグ”の世界観を形作ったロック/ポップの名曲たち



 前述した通り、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』はミュージカルという形にまとまるまで4年の歳月を費やした。1994年にジョン・キャメロン・ミッチェルが初めて“ヘドウィグ”としてクラブ「スクイーズボックス」に登場した際には、オリジナル曲はほとんどなく、ミッチェルがロックの名曲を“ヘドウィグ”に合わせて替え歌にして歌ったという。


 その時期に歌われていた楽曲は、英語版ウィキペディアによるとフリートウッドマックの「Oh Well」、テレビジョンの「See No Evil」、レックレス・エリックの「Whole Wide World」、オノ・ヨーコの「Death of Samantha」、ペル・ウブの「Non-Alignment Pact」、シェールの「Half Breed」、デヴィッド・ボウイの「Boys Keep Swinging」モット・ザ・フープルの「All the Young Dudes」、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Femme Fatale」、そしてパット・ブーンの娘デビー・ブーンが映画『マイ・ソング』(1977)の主題歌をカバーして大ヒットさせた「You Light Up My Life(邦題:恋するデビー)」だったようだ。


 これらの曲がどんなアレンジで“ヘドウィグ”風に歌われていたのか、ぜひ再現して欲しいところだが、ここであえて注目したいのがレックレス・エリックの「Whole Wide World」だ。


 レックレス・エリックは、70年代後半にイギリスのパブロックシーンから現れたシンガーソングライターで、世間によく知られているという意味では唯一と言っていい代表曲が「Whole Wide World」。EとAというたった2つのコードに載せて、世界のどこかで待っている女の子を探しに行くよと歌う、シンプルさが光る名曲である。レックレス・エリックの、どこか情けなくて虚勢を張ったような独特の声も相まって、思わず微笑まずにはいられない魅力がある。


 この曲は、マーク・フォースター監督の『主人公は僕だった』(2006)年でも印象的に使われていた。ウィル・フェレル扮する堅物の会計監査官は、自分の殻を破ろうと、いつか買いたいと思っていたエレキギターを手に入れ、初めての練習曲に「Whole Wide World」を選ぶ。そして、恋する女性アナの家にあったギターを爪弾きながら歌い、アナと結ばれるのだ。


 子供の頃に母親から「この世界にはたった一人だけ、あなたを待っている女の子がいるの」と聞かされる「Whole Wide World」の歌詞は、「オリジン・オブ・ラブ」のテーマとも完全にシンクロしている。「彼女を見つけるために、世界中どこまでも行くよ」と歌う青いロマンティシズムが、“ヘドウィグ”の物語を形作っていた事実は間違いないだろう。「Whole Wide World」や最初のステージで歌われたというカバー曲を念頭に置きながら『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』を観直すと、これまで気づかなかった新たなふくらみが感じられるので、ファンの方々にはぜひおすすめしたい。



文: 村山章

1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。



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 『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』

DVD ¥1,429 +税 

ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

公式サイト: https://warnerbros.co.jp/home_entertainment/detail.php?title_id=3724

© 2001 New Line Productions, Inc. © 2001 Fine Line Features. All rights reserved.

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