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『デトロイト』脚本のきっかけは一人のミュージシャンの物語 ※注!ネタバレ含みます。

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『デトロイト』脚本のきっかけは一人のミュージシャンの物語 ※注!ネタバレ含みます。

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暴動の最中に歌っていたマーサ&ザ・ヴァンデラス



 デトロイト暴動の背景には、白人を中心とした富裕層が郊外に移り住み、空洞化した市街中心部に職を求めた黒人層が流入した“インナーシティ”現象があった。当時のデトロイトは自動車産業の発展で労働力を必要としており、黒人の人口は全体の40%に達していた。ところが警察官の95%は白人で、人種差別意識の根強い彼らと黒人系住民の諍いが頻発していたのだ。


 マーク・ボールによると、ザ・ドラマティックスは一時期人気レーベル“モータウン”に所属していたという。皮肉なことに、モータウンは地元デトロイトから急速に発展した音楽レーベルで、黒人アーティストを抱えながらも白人マーケットを意識して成功していた。映画の序盤にも、デトロイト中心部のFOX劇場でモータウンのレビューショーが行われているシーンがあり、客席に着飾った白人層が大勢いるのがわかる。



『デトロイト』© 2017 SHEPARD DOG, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.


 そのFOX劇場の舞台袖で、リードとザ・ドラマティックスの仲間たちは成功の鍵をつかみ取ろうと息巻いているのだが、暴動のせいでショーは中止となってしまう。この時、ステージ上でパフォーマンスしていたのはマーサ&ザ・ヴァンデラス。モータウンの盛衰を翻案したミュージカル『ドリームガールズ』(2006)で、秘書として応募してくる女性シンガーのモデルになったのがフロントシンガーのマーサ・リーヴスである。リーヴスによると、同年にリリースしたヒット曲「Jimmy Mack」を歌っていたところに暴動の報が届き、観客に帰宅を呼びかけるよう要請されたという。


 『デトロイト』ではそのくだりは少々脚色されているようだ。ザ・ドラマティックスの面々がステージに呼び込まれた時にコンサートの中止が告げられることになっているのだ。またマーサ&ザ・ヴァンデラスが歌っているのも「Jimmy Mack」ではなくが「逃げ場所はない、隠れる場所もない」と歌う「Nowhere to Run」。これまた皮肉が効いた選曲である。



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