(C)2018Twentieth Century Fox Film Corporation
『デッドプール2』自作自演で「第四の壁」を軽々と破壊し、当たり役を極めたライアン・レイノルズ ※注!ネタバレ含みます。
11年間待って、ようやく完成させた念願の作品
要するに、この『デッドプール2』では、前作以上に、デッドプール=(スーツを着ける前の)ウェイド・ウィルソンというより、デッドプール=(演じている)ライアン・レイノルズという点が強調されるのだ。第四の壁が取り払われ、役と俳優の同一化へと進んでいく。この作りは「自作自演」だからこそ、可能になった。
『デッドプール2』では、主演のライアン・レイノルズが製作、脚本にもクレジットされている。つまり脚本段階から彼が濃密に関わっているわけだが、クレジットこそされなかったものの、実は1作目でもライアンは脚本の作業に加わっていた。男同士の全裸バトルシーンを、デヴィッド・クローネンバーグ監督の『 イースタン・プロミス』をヒントにしたのは、ライアンのアイデアだったりと、全編に彼の意思が反映されている。ここまで企画全体に関わってきた理由は、このデッドプール役がライアンにとって「悲願」だったからだ。
『デッドプール2』(C)2018Twentieth Century Fox Film Corporation
ライアン・レイノルズが初めてデッドプール役を打診されたのは、2005年のこと。スタジオの重役に「ぴったりの役がある」と勧められ、初めて原作を読んだ彼は、「これこそ、自分が求めていた役だ」と確信したという。しかしその重役が異動してしまい、企画は一旦、棚上げ。ようやく回ってきたデッドプール役は、2009年公開『 ウルヴァリン:X-MEN ZERO』での敵キャラだった。しかしそこでのデッドプールは口が縫合されている状態で、持ち味である「おしゃべりで、お茶目」なキャラとは真逆。原作ファンの評判も最悪だった。意気消沈したライアンは、2011年、『 グリーン・ランタン』でアメコミヒーロー役を得るものの、これも完全な失敗作に終わった。
それでも諦めなかったライアンは、プロジェクトが正式に始まることを信じ、長い時間をかけて脚本家らとストーリーを練り上げていった。2016年、念願の『デッドプール』が完成し、主人公のウェイド・ウィルソンが人体改造されるシーンに、「緑色のヒーロー」とほのめかして『グリーン・ランタン』の失敗を後悔するセリフを入れるなど、早くも自作自演による自虐ネタを展開。この自虐ネタは、『デッドプール2』でさらに明確に示され、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』と『グリーン・ランタン』、2作の「黒歴史」を封印するという大爆笑シーンができあがった。笑わせつつも、ライアンの過去を知っているファンにとっては、胸が熱くなるのは間違いない。