(C)2018Twentieth Century Fox Film Corporation
『デッドプール2』自作自演で「第四の壁」を軽々と破壊し、当たり役を極めたライアン・レイノルズ ※注!ネタバレ含みます。
役と俳優本人の多くの共通点が、奇跡を生んだ?
では、なぜここまでライアン・レイノルズが、デッドプールの映画化に固執したのか。それはやはり、自分との共通点の多さだろう。まず主人公のウェイド・ウィルソンも、ライアン・レイノルズも、ともにカナダ出身であること。このカナダに関するネタは『デッドプール2』にも、ちらりとセリフで登場する。そして身長も同じ6.2フィート(約188cm)であること。原作のウェイドと、『デッドプール』1作目の撮影中のライアンが、ほぼ同年齢だったこと。さらに両者のミドルネームを入れた名前に意外な共通点がある。ウェイド・ウィンストン・ウィルソンと、ライアン・ロドニー・レイノルズは、イニシャルがそれぞれWWW、RRRと、同じアルファベット3連続なのである。もちろん早口で、お調子者の性格という点も同じだという。これらの共通点は、すべてライアン・レイノルズ本人が解説したものである。
『デッドプール2』(C)2018Twentieth Century Fox Film Corporation
その役をどうしても自分で演じたくて、企画段階から深く関わり、長い時間がかかってもいつか実現すると心から信じ、そのとおりになる。そして完成した作品が大評判となる。インディペンデント作品なら可能かもしれないが、アクション大作でこの法則を実現したのは、稀に見る奇跡と言えよう。『 パイレーツ・オブ・カリビアン』のジョニー・デップ=ジャック・スパロウや、『 ミッション:インポッシブル』のトム・クルーズ=イーサン・ハント、『 X-MEN』のヒュー・ジャックマン=ウルヴァリン、『 ハリー・ポッター』のダニエル・ラドクリフ=ハリーなど、近年の人気シリーズの当たり役は、どれもオファーやオーディションを経て、俳優に「もたらされた」ものである。演じたい役を演じるという、デッドプール=ライアン・レイノルズの執念と成功は、すべての俳優にとって理想の姿かもしれない。
1作目が世界的に大ヒットし、『デッドプール2』の製作費は大幅にアップされたが、おちゃらけ感と過激さ、そして下品さ(褒め言葉!)という、作品の魅力は決して損なうことなく、続編が陥りやすい安易な道には進まなかった。そのあたりもライアン・レイノルズの役への溢れまくる愛と、あれこれ模索を繰り返した自作自演の結果であろう。
文:斉藤博昭
1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。スターチャンネルの番組「GO!シアター」では最新公開作品を紹介。
『デッドプール2』
6月1日全国ロードショー
配給:20世紀フォックス映画
(C)2018Twentieth Century Fox Film Corporation
※2018年6月記事掲載時の情報です。