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『それから』韓国の異能監督ホン・サンス×主演女優キム・ミニのクセになる映画世界 ダメ恋愛の行間から人生の真実味がにじみ出す
『それから』あらすじ
アルム(キム・ミニ)は大学教授の紹介で、著名な評論家でもあるボンワン(クォン・ヘヒョ)が社長をつとめる小さな出版社“図書出版 カン”に勤めることになった。ボンワンは、毎朝4時半に起きて出勤し夜遅くまで帰らないことで、妻に浮気を疑われている。アルムは彼が経営する出版社に初出勤する。アルムを好意的に迎えたボンワンは、早速、近所の中国料理店で昼食をともにする。堅苦しい敬語はやめようと、一気に距離を縮めようとするボンワンにアルムは戸惑う。同じ日の午後、事務所に踏み込んできた女に、アルムはいきなり殴られた。浮気の証拠を見つけたボンワンの妻(チョ・ユニ)が、アルムを夫の愛人だと勘違いしたのだ。今日が初出勤だと説明しても、妻は信じない。追い詰められたボンワンは、不倫の相手は外国に行ってしまい、居場所は知らないと答える――。
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コアな人気を誇る多作の監督ホン・サンスと、恋人宣言した女優キム・ミニ
いま、世界のシネフィル(映画狂)――特にヨーロッパや日本のコアな観客から熱烈に愛されている現役監督のひとりに、韓国のホン・サンスは確実に挙げられるのではないか。彼の世界はクセになる。しかもものすごい多作で、そのペースは年々上がっているという類のなさ。2012年には『ハハハ』ほか四本の新作がまとめて日本公開され、さらにフランスの名女優イザベル・ユペールを主演に迎えた『3人のアンヌ』が続き、2014年には『ヘウォンの恋愛日記』と『ソニはご機嫌ななめ』が日本公開。同年の末には加勢亮主演の『自由が丘で』も!
この驚異的な仕事ぶりは、別にハードな商業的要請によるものではない。どの作品もオリジナル企画で、ホン・サンスの個性が100%出た「作家映画」ばかりなのである。まるで彼は、呼吸するように映画を撮っている。内容は基本的にすべてが日常のスケッチであり、ブログを更新するような感覚で新作を発表しているとも言えるだろう。この軽やかなブレなさは、やはり究極的な理想の創作環境と映るのだろうか、同業の映画監督にも絶大な人気がある(おそらく「うらやましい!」といった具合に)。
そして今年、またもや新作が四本連続で日本公開。すべて『お嬢さん』(2016年/監督:パク・チャヌク)の主演でよく知られる美人女優、キム・ミニを主演に据えたものだ。
『お嬢さん』予告
実はホン・サンス(57歳)とキム・ミニ(36歳)は現在、恋人関係にある。ただホン・サンスには妻子がいるため、ふたりは不倫関係のスキャンダルで韓国の芸能ニュースをずいぶんお騒がせした(監督はそこから離婚訴訟に展開中)。
ホン・サンスの映画には、ほぼ毎度のパターンとして、女好きで浮気者の男が登場する。しかもその彼は、ズバリ“大学で教鞭を取ったり、上映会で講演したりする芸術派の映画監督”である場合が多い。「要は、お前じゃん!」というツッコミが容易に飛ぶキャラ設定を多用しているのだ(笑)。もちろん自己投影とフィクションの間には複雑なねじれやズレが介在するものであるが、しかし今回の騒動は、あまりにもわかりやすく映画の世界を地で行く感じ。そんな監督本人の私生活事情は、「うらやましい!」を通り越して「コイツならしょうがないか」の境地だろうか? 主演女優との公私混同ぶりは、ダイアン・キートンやミア・ファローと組んでいた頃の往年のウディ・アレンを彷彿とさせるものでもある。
『それから』© 2017 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.