1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ベティ・ブルー
  4. 『ベティ・ブルー』狂おしすぎる愛の姿に、激しく分かれた好き嫌い
『ベティ・ブルー』狂おしすぎる愛の姿に、激しく分かれた好き嫌い

© Photofest / Getty Images

『ベティ・ブルー』狂おしすぎる愛の姿に、激しく分かれた好き嫌い

PAGES


「女」から「男」の物語に変わるインテグラル=完全版


 

 『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』は上映時間が120分だったが、その後、1992年に約1時間を追加した『ベティ・ブルー インテグラル』が公開される。インテグラル にはいくつかの意味があるが、この場合、「完全な」ということ。これはベネックス監督によるディレクターズ・カットであり、時期は多少前後するが、当時、『グラン・ブルー』、『ニュー・シネマ・パラダイス』、『ブレードランナー』など、同様のディレクターズ・カット版の公開は、ひとつの潮流になっていた。


 しかし『ベティ・ブルー』の場合は、ある大きな問題が発生する。ディレクターズ・カットといいながら、ベネックス監督の意図に沿わない「修正」が加えられたからだ。それは言うまでもなく日本の映倫審査におけるセックス描写や全裸でのボカシであり、全10シーンへの修正に対し、ベネックスは激怒。わざわざ来日までして抗議の意思をあらわにした。その後、2002年、ベティがゾルグの局部に口づけする箇所以外の9シーンは無修正に戻り、「完全版」としてソフト化される。この『ベティ・ブルー』では、ゾルグがやたらと全裸で室内をうろつくシーンが多く、たしかに修正の対象になるのは仕方がなかった。ゾルグが自分の局部とソーセージを比べるという、ちょっと笑える描写もあり、このあたりは修正が違和感を与えていた。



『ベティ・ブルー』© Photofest / Getty Images


 ややこしいのは、ソフトの「ノーカット完全版」が178分で、その後に発売された「リニューアル完全版」が185分という違い。追加シーンが見当たらず、要するにスピードの違いで、185分が「理想」に近いということのようだ。


 長さの問題だけでなく、『愛と激情の日々』と『インテグラル』の印象は大きく異なる。前者がベティを中心にドラマが展開するのに対し、後者はよりゾルグの視点が大きくなっているからだ。自暴自棄で破滅的な愛に心を鷲掴みにされる世界が、これほどの愛は二度と経験できないとばかりに身を委ねる世界へと変わっていく。ひとつの作品世界でのこうした印象の変化も『ベティ・ブルー』が一定の人々を虜にしてきた要因かもしれない。



PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ベティ・ブルー
  4. 『ベティ・ブルー』狂おしすぎる愛の姿に、激しく分かれた好き嫌い