『ベティ・ブルー』あらすじ
昔は小説家志望で今は雑用で食いつなぐ中年男性ゾルグの元に、ある日自由奔放な少女ベティが現れる。激しく惹かれ合った二人は生活を共にし、セックスに耽る日々をすごすが。。衝撃的で破滅的な二人を描く、激しくも切ないラブストーリー。
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1980年代フランスの「恐るべき子供たち」
1980年代のフランス映画界では、明らかに新しい才能が台頭していた。ジャン・コクトーの小説のタイトルを引用し、「Enfant Terrible=恐るべき子供たち」と形容されたその3人とは、リュック・ベッソン、レオス・カラックス、ジャン=ジャック・ベネックスである。
ジャン・リュック・ゴダール、フランソワ・トリュフォー、クロード・シャブロルらが起こしたヌーベルバーグの波は過ぎ去り、カラーを駆使したスタイリッシュな映像に、エンターテインメントしての面白さも追求した新たな監督たちの作風は、「ネオ・ヌーベルバーグ」「ヌーベル・ヌーベルバーグ」などとも称され、日本でもミニシアターのブームに乗って映画ファンの心をつかむことに成功した。
リュック・ベッソンの名が知れ渡ったのは、長編2作目の『サブウェイ』(1984)で、近未来のパリの地下空間をとらえた斬新な感覚は衝撃的なレベルであった。その後、ベッソンは『グラン・ブルー』(1988)『レオン』(1994)など多くの人に愛される作品を撮ることになるが、製作会社ヨーロッパ・コープを設立した後は、コンスタントに監督を務めるものの、全盛期のような傑作は減少し、プロデューサーとしての顔がメインとなった。
『レオン』予告
レオス・カラックスは「ゴダールの再来」などともてはやされ、モノクロの『ボーイ・ミーツ・ガール』(1983)、大胆な色彩設計でパリを撮った『汚れた血』(1986)を経て、『ポンヌフの恋人』(1991)で大人気監督の座を手に入れる。しかしそれ以降は、次作までのスパンが長くなり、やはり新たな傑作は生み出せなくなっている。
そしてジャン=ジャック・ベネックス。現在も映画制作は続けているが、自身の劇場映画監督作は、2001年の『青い夢の女』以来、発表していない。TVのドキュメンタリーなどは撮っているようだが……。しかし一時代を作った「恐るべき子供たち」のきっかけとなった作品は、ベネックスの長編第1作『ディーバ』だったのは間違いない。
レコードを発売しないオペラ歌手の歌声を、コンサートでこっそり録音する郵便配達員。そのテープを巡る複数のサスペンスが、純粋なラブストーリーと絡み合い、出てくるキャラクターも超個性的。大量のピースのジグソーパズルなどのアイテム、美しい映像、衝撃のバイオレンスなど、あらゆる要素が蠱惑的だったこの『ディーバ』(1981)で、ベネックスは世界的にその名を認知される。
しかし続く、『溝の中の月』(1983)ではナスターシャ・キンスキー、ジェラール・ドパルデューという大物を迎えるも、妖しげな耽美的ビジュアルのみが先行し、ストーリーが混乱する結果となり、賛否両論(むしろ「否」が大勢を占めた)。その真価が試されたのが、3作目の『ベティ・ブルー』だった。