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『ディーバ』から『ベティ・ブルー』へ。その後が惜しまれるジャン=ジャック・ベネックスの才能

『ディーバ』から『ベティ・ブルー』へ。その後が惜しまれるジャン=ジャック・ベネックスの才能

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強烈な個性を『ディーバ』と観比べる楽しみ



 『ディーバ』と『ベティ・ブルー』をつなぐ要素は他にも目につく。『ディーバ』では、主人公を追い回すコンビが強烈な印象を残したが、その一人、通称「西インド諸島」を演じたジェラール・ダルモンは『ベティ・ブルー』にはゾルグとベティに実家を託す友人のエディ役で登場。2作での雰囲気の違いに、ダルモンの演技の幅を実感できる。


 そして相棒の殺し屋、通称「主任司祭」役で長編映画初出演となったドミニク・ピノンは、『溝の中の月』にも出演した後、『ベティ・ブルー』ではドラッグの売人役を演じた(『インテグラル』のみに登場)。このドミニク・ピノンは、一度見たら忘れられない個性的な顔で、『ディーバ』でもイヤホンでシャンソンを聴きながらアイスピックで相手を殺し、つねに「○○はキライだ」とつぶやくなど、インパクトが強すぎ! ピノンはその後、『アメリ』(2001)などのジャン=ピエール・ジュネ監督作品の常連となる。



 さらに『ディーバ』の主人公ジュール役、フレデリック・アンドレイも、『ベティ・ブルー』でベティがパリに来たシーンで、通行人役で一瞬ながらカメオ出演。『ベティ・ブルー』では、ゾルグの車やファッションが黄色だったが、『ディーバ』でジュールが乗るモビレット(原付自転車)も、これまた黄色である。


 『ベティ・ブルー』は、米アカデミー賞でも外国語映画賞にノミネートされ、ジャン=ジャック・ベネックスは、巨匠への一歩を踏み出す……はずだった。しかし長編4作目の『ロザリンとライオン』(1989)では、猛獣の曲芸シーンなどで前例のないカメラワークや編集に挑みながらも、作品自体の評価は高くなく(この作品は改めて評価されるべき!)、『IP5/愛を探す旅人たち』(1992)も、イヴ・モンタンの遺作だと話題になりつつ、現実と幻想のアンバランスなどで共感を集めることはできなかった。その後、日本の秋葉原で撮ったドキュメンタリー『Otaku(オタク)』(1993)も、肝心の日本で正式に劇場公開されず、満を持してジャン=ユーグ・アングラードを迎えた『青い夢の女』も、全盛期のように観客に強い印象を与える作品にはならなかった。


 現在70代になったベネックスが新たな傑作を送り出す可能性は、きわめて少ない。しかし、『ディーバ』、『ベティ・ブルー』の記憶が鮮烈に残っているファンは、ベネックスの「復活」を見てみたいと、わずかな希望をもっているのではないだろうか。



文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。スターチャンネルの番組「GO!シアター」では最新公開作品を紹介。



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© Photofest / Getty Images

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