銭湯で働く450歳のバンパイア森蘭丸。至高の味わいである「18歳童貞の血」を求め、銭湯のひとり息子・李仁(15歳)の童貞を守り続けている。そんな李仁が同級生の葵に一目惚れ、童貞喪失の危機に立ち向かう蘭丸だったがーー。原作は奥嶋ひろまさが描く、「別冊少年チャンピオン」にて連載中の人気漫画「ババンババンバンバンパイア」。この漫画ならではの世界観を見事に実写化したのは、CMディレクターとして第一線で活躍する浜崎慎治監督。主演の吉沢亮をはじめとする役者陣の”ガチ”演技も相まって、一級のエンターテインメントに仕上がっている。
浜崎監督はいかにして映画『ババンババンバンバンパイア』を作り上げたのか。話を伺った。
『ババンババンバンバンパイア』あらすじ
銭湯で働く森蘭丸(吉沢亮)、その正体は450歳のバンパイア。至高の味わいである「18歳童貞の血」を求め、銭湯のひとり息子である15歳の李仁(板垣李光人)の成長と純潔をそばで見守る日々だったが、ある日李仁がクラスメイトの葵(原菜乃華)に一目惚れ!恋が成就してしまえば、それすなわち童貞喪失の危機!突如訪れた絶体絶命のピンチに「恋をさせてはなるものか!」と蘭丸による決死の童貞喪失阻止作戦が幕を開ける!ところが、そう意気込んで葵の家を訪ねるも、バンパイアオタクである葵から逆に恋心を抱かれてしまう蘭丸。さらには蘭丸の命を狙うバンパイアハンター・坂本(満島真之介)、葵の兄である脳筋番長・フランケン(関口メンディー)が次々登場、全員の勘違いとすれ違いにより、恋の矢印が大混線!そして、そんな蘭丸のもとへ因縁の相手である兄・長可(眞栄田郷敦)の影が忍び寄る――。
Index
歌モノを入れた理由
Q:オファーが来た時の印象はいかがでしたか。
浜崎:お話をいただいたときは、原作がまだ2〜3巻くらいまでしか出版されておらず、内容も1話完結のような構成が多かった。それでも「18歳童貞の血を狙っている」という設定や出てくるキャラクターが面白いので、そこをどう映画化できるかをまず考えました。
「童貞」というワードをはじめ男っぽい要素が多いので、女性の目線が欲しくて、コメディを多く手がけている松田裕子さんに脚本をお願いしました。松田さんの力も借りながらプロットを考えていったのですが、2時間の映画としてまとめるのがとにかく大変でした。
『ババンババンバンバンパイア』©2025「ババンババンバンバンパイア」製作委員会 ©奥嶋ひろまさ(秋田書店)2022
Q:企画段階では、眞栄田郷敦さん演じる長可がまだ原作に登場していなくて、今後登場予定の旨を奥嶋先生が教えてくださったそうですね。
浜崎:そうなんです。最初はどこを山場にしようかと考えていたのですが、長可が出てくることを伺ってからは、もうそこが“山”だなと。ただ、その山に至るまでは蘭丸と李仁が軸になるので、そこに対してみんながジョインしていく感じを考えていきました。また、原作にはなかった歌モノや、蘭丸と李仁の映画オリジナルのシーンなども追加し、夏祭りをきっかけに山場に向かう構成にしています。松田さんが本当にうまくまとめてくれました。
歌モノに関しては「僕がやってみたかった」というのが大きいです。『RRR』(22)みたいなインド映画特有の面白さには、歌の強さもあるのではないか。あとノリがいいですよね。『RRR』ほどミュージカルでなくてもいいから、キャラクターを紹介するような歌モノがやりたかった。CM的な発想かもしれませんが、そういったものを入れるとフックになるのかなと。