才能を知る、才能を見る、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を支えた才人たち

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2018.10.15相馬学

引き起こしたサブカルチャーの波

　音楽面での才能の参加も忘れるわけにはいかない。1950年代のR&Bシンガー、スクリーミン・J・ホーキンスが歌う"I Put a Spell on You"はエヴァの大好きな曲として、劇中で数度フィーチャーされ、映画のメインテーマ的な役割を果たした。また、ウィリー役のジョン・ルーリーは前衛ジャズ・グループ、ラウンジ・リザーズのリーダーで、本作では音楽も担当。エディ役のリチャード・エドソンはソニック・ユースの元ドラマ―でもある。

　本作は日本公開時、ピーター・バラカン氏らによって”音楽的な映画”と評されたが、背景にはこのようなジャンルミックスがあった。

　映像と音楽の融合だけではない。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』は詩的であり、写真的でもあり、粒子の粗いモノクロ映像はどこか墨絵的でもある。1970年代後半から80年代にかけて、NYは複合的アーティストの溜まり場でもあった。パティ・スミスやトーキング・ヘッズといったNYパンクのカリスマたちも、音楽以外のアートに目を向けていた。ジャームッシュは逆に映画だけでなく音楽にものめり込み、現在もバンド活動を平行して行なっている。

　1986年の日本で、ジャームッシュの名は一気に広まった。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のヒットを受けて、ぴあフィルムフェスティバルでは来日も果たす。さらに彼が大学の卒業制作として生み出した初長編『パーマネント・バケーション』が日本公開され、同年末には有楽町スバル座で新作『ダウン・バイ・ロー』が封切られ、これまたロングランヒットを記録。それはさらなる余波を引き起こし、80年代後半から90年代前半にかけてのミニシアター・ブームを先導したばかりか、サブカルチャーの大きな波を引き起こした。この映画は、やはり“事件”だったのだ。

文：相馬学

情報誌編集を経てフリーライターに。『SCREEN』『DVD&動画配信でーた』『シネマスクエア』等の雑誌や、劇場用パンフレット、映画サイト「シネマトゥデイ」などで記事やレビューを執筆。スターチャンネル「GO！シアター」に出演中。趣味でクラブイベントを主宰。

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『ストレンジャー・ザン・パラダイス』

Blu-ray & DVD発売中

発売元：バップ