『落下の王国』あらすじ
1915年のロサンゼルス。無声映画のスタントマンをしていたロイは、撮影中に大怪我を負い半身不随となる。そんなとき、病室に5歳の少女アレクサンドリアがやってくる。彼女は木から落ちて腕を骨折して入院していた。彼は、彼女にアレキサンダー大王の物語を聞かせ、翌日も病室に来るようささやく。再びアレクサンドリアがロイのもとを訪れると、彼は総督と6人の男たちが織り成す壮大な叙事詩を語り始める。やがて自分自身をも救う壮大な物語へと広がっていく。
Index
- 映像の魔術師の放つ壮大な自主プロジェクト
- 人生の大きな絶望が、この映画を生むきっかけとなった
- インタラクティブに構築されていくストーリー
- ターセム×石岡瑛子 互いに及ぼしあった影響
- そして、愛に満ちた終幕へ
映像の魔術師の放つ壮大な自主プロジェクト
アカデミー賞やゴールデングローブ賞に候補入りしたわけではなく、ましてや興行収入で爆発的なヒットに恵まれたわけでもない。しかし、いざ本作と真向かうと圧倒的な映像力に引き込まれ、これは自分にとって生涯忘れ得ぬ作品になるだろうと直感的に思い知らされる。
CM出身の映像クリエイター、ターセム・シンが放つ長編第2作目『落下の王国』(06)は、既存の物差しでは到底推し量ることのできない作品だ。公開当時、劇場スクリーン一杯に広がった「CGほぼ無使用」の圧巻なビジュアリティからも作り手の執念が伝わってきたが、後になってその裏側を深掘りすると、さらなる常識離れした部分が見えてくる。
『落下の王国』予告
なにしろ構想期間は20年以上、撮影場所は24か国を超えるという。こんな無尽蔵なプロジェクトゆえ資金集めは困難を極め、これほどのスケールにもかかわらず大手会社が一切絡まない状態で制作が進められた。ターセム自身もはじめから自主プロジェクト、あるいはライフワーク的な位置付けで、この企画に取り組んでいたようだ。