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『暗殺の森』人間の真実を浮き彫りにする過剰な様式美 ※注!ネタバレ含みます。

(c)Photofest / Getty Image

『暗殺の森』人間の真実を浮き彫りにする過剰な様式美 ※注!ネタバレ含みます。

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※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


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他の追随を許さない、官能的な映像美



 溝口健二監督『雨月物語』(53)、スタンリー・キューブリック監督『2001年宇宙の旅』(68)、アンドレイ・タルコフスキー監督『ノスタルジア』(83)、ウォン・カーウァイ監督『花様年華』(00)、ターセム・シン監督『落下の王国』(06) …。


 ストーリー云々ではなく、その圧倒的な映像の美しさによって「問答無用に心を奪われてしまう映画」というものが、この世には存在する。そして筆者は、そのような映画をこよなく愛する者である。ふだん解説記事でもっともらしいことを語っておりますが(もっともらしくないかもしれないけど)、テーマだとか意味だとかは後から付いてくるもので、映画鑑賞中は脳味噌を空っぽにして映像に溺れたい。そもそも映画は視覚芸術としての側面が強いのだから、全然それでいいんじゃないかと思っている。


 息を呑むほど映像が美しい作品は数多くあれど、筆者の独断と偏見によるナンバーワン映画は、ベルナルド・ベルトルッチ監督の『暗殺の森』(70)だ。初めて観た時の衝撃は凄かった。圧倒的な色彩設計、厳格なコンポジション、シャープなコントラスト。「絵画的」やら「詩的」やら「バロック的」やら、あらゆる紋切り型の美辞麗句を飛び越えて、“絵”そのものが脳内に飛び込んできたのである。『暗殺の森』以上に官能的な映像美を誇る作品を、筆者は知らない。


『暗殺の森』予告


 撮影の話は後述するとして、まずは映画の成り立ちから見ていこう。原作は、アルベルト・モラヴィアが1951年に発表した『孤独な青年』。幼少期に同性愛者の青年を射殺するという強烈なトラウマを抱えた主人公マルチェロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)が、過去から逃れようとファシズムに傾倒する物語である。


 ベルトルッチが、パラマウントのイタリア支局から「何かいい企画はないか?」と相談を持ちかけられたことが、映画化のきっかけだった。ベルトルッチはモラヴィアの『孤独な青年』をプレゼンし、そのまま製作する流れになったのだが、何とこの時点で彼はこの小説を読んでいなかった。当時の恋人マリア・パオラ・マイノが『孤独な青年』のファンで、その内容を聞かされていただけ。映画化が決まると慌てて本を読を読み始め、およそ一ヶ月で脚本を書き上げたという。





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