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『ラストタンゴ・イン・パリ』画家フランシス・べーコンが映画監督たちに与えるインスピレーション、その源流
2019.11.11
『ラストタンゴ・イン・パリ』あらすじ
冬のパリ。中年男のポールは、アパートの空き部屋で偶然出会った若い娘ジャンヌをいきなり犯す。だが2人は何事もなかったかのように別れる。ジャンヌには婚約者がいた。一方、ポールは妻が自殺したばかりで人生に絶望していた。2人はその後もアパートの空き部屋で会い続け、互いの肉体におぼれていくが……。
Index
31歳のベルトルッチが手がけた衝撃作
2018年11月に他界した、イタリアの巨匠、ベルナルド・ベルトルッチ監督(享年77才)。達観した視点でヨーロッパの退廃を官能的に美しく表現する術を持ち、わずか29才で撮った『暗殺の森』(70)で、アカデミー賞脚色賞にノミネート、世界的な地位を得る。そして『ラストエンペラー』(87)では、ノミネートされた9部門全て受賞する快挙を成し遂げる。
その後も、モロッコを舞台に一組の夫婦の過酷な運命を描いた、ポール・ボウルズ原作の映画化『シェルタリング・スカイ』(90)、仏教をテーマにした『リトルブッダ』(93)など、映画化困難なテーマやストーリーに果敢に挑戦し続け、多くの映画人やファンを魅了し続けてきた。
そのような華々しいフィルモグラフィーの中でも、実験的野心に満ち、テーマとクラフト性が高いレベルで結実した初期の作品がある。その後の映画人に多くの影響を与えたその作品は『ラスト・タンゴ・イン・パリ』(72)だ。
『ラストタンゴ・イン・パリ』予告
パリのアパルトマンを舞台に、互いの名前も知らない中年男性と若い女性が重ねる逢瀬。さぞかしロマンチックな内容・・・と思いきや、そこはベルトルッチ、そうはいかない。撮影当時31才とは思えない、老衰したかのような冷徹な視点で二人の行方を描く。
マーロン・ブランド演じる中年男性は妻に自殺されてその理由がわからず人生に疲れ果てている。その虚無感が、マリア・シュナイダー演じる若い女性を逆にひきつけることにもなる。二人の性愛シーンでは感情の高揚もロマンチシズムのかけらもなく、観る人にいっさいの感情移入を許さない。やがて物語は衝撃的なシーンで幕を閉じるのだが、ベルトルッチ監督は、すでに映画の冒頭に、本作のテーマを伝える一つのクライマックスを用意している。