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『ラストタンゴ・イン・パリ』画家フランシス・べーコンが映画監督たちに与えるインスピレーション、その源流

(C)2017 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

『ラストタンゴ・イン・パリ』画家フランシス・べーコンが映画監督たちに与えるインスピレーション、その源流

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ヴィットリオ・ストラーロの卓越した描写力



 ベルトルッチは、フランシス・ベーコンの世界観をフィルムに定着するために、『暗殺のオペラ』(70)『暗殺の森』から組んできた撮影監督、ヴィットリオ・ストラーロに依頼する。ストラーロは、西洋絵画を研究し尽くし、光と影の手法を撮影に取り入れてきたアーティストであり、『ラストエンペラー』を含め、アカデミー撮影賞を3回受賞した伝説的存在である。


 描かれるのは、年月を刻んだパリの街並や鉄橋、アパートのエレベーター、部屋、若い女性のみずみずしい肉体と中年男性のゆるんだ肉体。これらを、光と影、色、大胆なアップショットや主張しない流麗なカメラワークで、完璧に描ききった彼の功績は非常に大きい。特に、アパートやカフェのすりガラス越しに顔を捉えたショットは、一瞬にして対象物が滲み、鑑賞者に不安感を与えるフランシス・ベーコンの絵の特徴をそのまま再現している。



(C)2017 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.


 清濁併せ持った、イマジネーション溢れるフランシス・ベーコンの絵画は、本作であらためて陽があたり、以降、多くの映画作家の想像力に火をつけていくことになる。代表的なものでは、『イレイザーヘッド』(77)『ブルーベルベット』(86)などデヴィッド・リンチのほぼ全ての作品の多くのシーンに影響が見て取れる。また、エイドリアン・ラインの『ジェイコブズ・ラダー』(90)も、フランシス・ベーコンの絵画を実写化することを目指していた。


 『ダークナイト』(08)において、故ヒース・レジャー版ジョーカーをつくる際、クリストファー・ノーランがメイクアップアーティストに見せたリファレンスはフランシス・ベーコンの絵画であった。また、同作の劇中、ジョーカーが走行する車中から半身を乗り出して体を風に任せる爽快な?シーンがあるが、微妙にぶれる身体、満足感で歪む顔はフランシス・ベーコンの絵画の手法そのままである。ティムバートン版『バットマン』(89)でも、美術館のシーンで絵画がそのまま登場している。



 フランシス・ベーコンの絵は、見る人の常識をゆさぶり、嫌悪感と抗いがたい誘惑を同時に兼ね備えた危険な魅力をふんだんに放つがゆえに、毒のある、ヴィジュアル強度を求めるクリエイターの心をわしづかみにするのだろう。


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