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『ジョーカー』社会の被害者が「王の資質」を得るまで――禁忌にふれる、悪への共振

『ジョーカー』社会の被害者が「王の資質」を得るまで――禁忌にふれる、悪への共振

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あまりに危険な“原点”



たまらなく危険な映画だ。稀代の問題作といっていい。

この作品を「認める」ことは、各々の尊厳にかかわる。


 「善と悪」の概念を根底から覆した『ダークナイト』(08)から、11年。アメコミ映画のイメージを一新した『ダークナイト』は、誰もが認める無二の傑作だ。だが遂に、その牙城を崩す“後継者”が誕生した。第76回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、アカデミー賞受賞も確実視されている『ジョーカー』(19)には、観る者の細胞を粟立たせ、否応なしに屈服させる「王の資質」が備わっている。


 本作は、バットマンの宿敵ジョーカーの誕生秘話を描く、単独オリジナル映画だ。これまでにジャック・ニコルソンやヒース・レジャー、ジャレッド・レトたちが演じてきた強烈なヴィラン(悪役)に挑戦するのは、『ザ・マスター』(12)、『her/世界でひとつの彼女』(13)、『ビューティフル・デイ』(17)など、作品ごとに役が降臨したような驚異の演技を見せるホアキン・フェニックス。そして、名優ロバート・デ・ニーロが最重要ともいえるキーマンを演じている。


 監督・脚本は、大ヒットコメディ『ハングオーバー!』シリーズ(09~13)のトッド・フィリップス。これまでの作風からがらりと変わり、哀しいまでの狂気と生乾きの痛みが、観る者の心をえぐる1本に仕上げた。



 共同脚本を手掛けたのは、『8 Mile』(02)、『ザ・ファイター』(10)のスコット・シルバー。撮影監督は、フィリップス監督作品や『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(19)のローレンス・シャー。衣装は『アーティスト』(11)、『ファントム・スレッド』(17)のマーク・ブリッジス、美術は『パターソン』(16)、『ビール・ストリートの恋人たち』(18)のマーク・フリードバーグが務めた。


 音楽は、『レヴェナント:蘇えりし者』(15)で坂本龍一と組み、『メッセージ』(16)でヨハン・ヨハンソンの薫陶を受けたチェリスト・歌手・作曲家のヒルドゥル・グーナドッティル。彼女は『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(18)の音楽も手掛けている。


 さらに製作には、『アリー/ スター誕生』(18)で監督として非凡な才能を見せつけた、人気俳優ブラッドリー・クーパーが名を連ねている。この豪華なスタッフ・キャスト陣の並びを見るだけで、本作の気合いのほどがうかがえるだろう。本国公開前にして、これだけの熱狂を生んでいる理由の1つがここにある。




 『ジョーカー』の舞台は、1980年代初頭。架空の町ゴッサム・シティには貧富の差が広がり、人々の心は荒んでいた。そんな時代にあって、他人を笑わせたいとコメディアンを夢見るアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は、多くの理不尽にさいなまれ、少しずつ狂気をたぎらせてゆく……。


 本作は、これまでの映像作品では深く言及されてこなかったジョーカーのオリジン(起源)に、大胆な解釈と新要素を盛り込んで切り込む内容となっている。核心的な部分については観てのお楽しみということで省くが、“ジョーカー”というアイコニックなキャラクターに対する各々のイメージが、本作によって刷新されることは間違いないだろう。



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