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声とパートナーを与えたアニメ版
前回に続き、初のタイトルロール作品『ジョーカー』に備えて、バットマンの宿敵にして犯罪界の道化王子ジョーカーについて、様々なバージョンを振り返りたいと思う。これまでのいろいろなスタイルや、基本的なイメージを改めて確認することで、今度のジョーカーが今までとどう違い、どう共通するのか、その個性がより楽しめるだろうと思った次第。
ブルース・ティムによるシャープなデフォルメが特徴的な1990年代のアニメ・シリーズ「バットマン」は、1989年の『バットマン』の影響下で制作され、全体的にダークな雰囲気。ダニー・エルフマンによる映画版のテーマ曲が使われているほか、ジョーカーの本名がジャック・ネイピアだったり、トゥーフェイスがアフリカ系の顔つきだったりする(映画ではビリー・D・ウィリアムズがトゥーフェイスの前身である地方検事ハーヴィー・デントを演じていた)。代表的なヴィランから少しマイナーな悪役、さらにバットマンの相棒ロビンやバットガールといったバットマン・ファミリーなど、一通りのキャラクターがシンプルでわかりやすいデザインで登場するので、世界観やキャラクターたちの前提を理解するのに向いている作品だと思う。
この作品から生まれたものは主にふたつ。ひとつはマーク・ハミルが声を当てるジョーカーである。言わずと知れた『スター・ウォーズ』オリジナル三部作の主人公ルーク・スカイウォーカーに次ぐ代表的な役と言ってもいいくらい、ハミルのジョーカー声は定番のものとなる。その地の底から雷鳴轟く夜空まで這い上がってくるような凄まじい笑い声は、どの実写版の笑い声よりも好きだ。
もうひとつ、このアニメから生まれたのはジョーカーの情婦ハーレイ・クインだ。映画『スーサイド・スクワッド』で初めて実写化された彼女は実はアニメからコミックに逆輸入された悪役であり、以後ジョーカーの共犯者となる。元々はジョーカーを治療するはずだったアーカム・アサイラムのカウンセラーだったのだが、ジョーカーと接している内に彼の狂気のカリスマ性に魅せられてしまい、道化の格好をした怪人ハーレイ・クインとなってジョーカーを病院から助け出し、自らもゴッサムの暗黒街に足を踏み入れるに至る。彼女のスタイルも作品やメディアによって変化があるが、個人的にはこのブルース・ティムが描いた初期の道化スタイルがお気に入り。