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作り手の“自我”が、恋の障害になるのが面白い。行定勲監督『劇場』【Director's Interview Vol.69】

作り手の“自我”が、恋の障害になるのが面白い。行定勲監督『劇場』【Director's Interview Vol.69】

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下北沢ロケがもたらした、リアルな“痛み”



Q:あと、やはりお聞きしたいのが、なぜこんなにも生々しい空気が作品全体に漂っているのか。自分が芝居をやっていた当時、日々感じていた息苦しさとか切迫感が画面の中に本当にあって。本作をご覧になった方々からも、「身につまされた」「昔を思い出して苦しかった」というような声が届いていると聞きました。その“におい”を、どうやって注入していったのか、すごく気になります。


行定:いま、おいくつですか?


Q:僕は32歳です。大学を卒業してから2年くらい、22から24歳くらいまでふらふらしながら芝居をやっていて。


行定:じゃあ、映画の中に出てくる下北沢とかでも芝居やってた?


Q:いえいえ! 下北は聖地ですし、小屋代が高くて僕なんかはできなくて。荻窪とか高円寺、阿佐ヶ谷あたりでした(笑)。


行定:まだこいつらいい方じゃないか!って感じだったんだね(笑)。


僕はいま51歳で、助監督時代、90年代の下北で若い演劇人とよくつるんでて。田中哲司とか長塚圭史とかケラさんや大人計画とかあの世代の連中です。




勝ち組は下北を出て行ってコクーン(シアターコクーン)とか池袋とかに進出して、劇中でKing Gnuの井口理がやってる売れっ子演出家の小峰は次は芸術劇場でやるぞとか、そういう成功例がある一方で、下北でずっと頑張ってたけど辞めて、去っていく人もたくさん知ってる。映画を撮ってて、そういった人たちの顔が浮かんだんです。


青春の残照というか、バンドマンでも演劇人でも、そういったものの吹き溜まりが下北という場所には象徴されている。下北が持つ文化というか、そこにあるのは成功だけではない。「夢を追いかけていいね」っていう世界だけではないんですよね。


Q:序盤のお話にあった、世間や社会の認識と作り手の内面のギャップですよね。好きなことをやっていても、こちらは常時ハッピーなわけじゃない。


行定:そう。それをちゃんと表現しないと、やってられないよね。



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