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『もっと超越した所へ。』前田敦子 皆で持ち寄り作っていくことが面白い【Actor’s Interview Vol.26】

『もっと超越した所へ。』前田敦子 皆で持ち寄り作っていくことが面白い【Actor’s Interview Vol.26】

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現場では監督がトップスター



Q:今回の山岸監督と根本さんも才能あふれるトップクリエイターですが、前田さんの出演されたフィルモグラフィーを振り返ると、錚々たる監督たちとお仕事をされています。そういった監督たちとのお仕事はいかがですか? 


前田:嬉しいですね。私がその“出会いの運”みたいなものを持っていること自体、ラッキーだと思っています。


Q:そういった監督たちの仕事が多いと、他の役者さんたちに羨ましがられそうですよね。


前田:そうですね。でも「次はあの監督と一緒にやるんですよね?」と、監督たちから言われることの方が多いかもしれません。どの世界でもそうかもしれませんが、映画の世界では横のつながりがすごく大事にされていて、そこに入っちゃうとすぐ仲間になれちゃう感じがします。特に映画ではそれを強く感じるんです。「どうやったらその世界に入れるの?」って言われたりもしますが、やっぱりどれだけ映画が好きか、それが大事かなと思いますね。


Q:日本でトップと呼ばれるような監督さんたちとのお仕事はいかがですか?


前田:監督なんですけど皆さんスター。現場ではトップスターなんですよ。現場の皆が監督のことを好きだから、この人のために何が出来るかという空気になっている。それは舞台演出の人にも感じますね。本当に一部の人たちにしか感じないものかもしれませんが、もう周りの皆がメロメロになってる(笑)。黒沢清監督なんて今まで会った人類の中で一番真摯な人だと思います。お札に載るんじゃないかと思うくらいですね(笑)。


Q:黒沢清監督の現場は本当に穏やかだと聞きますが、それでいて自分のやりたいものをしっかり作り上げる。すごいなと思います。


前田:黒沢監督は真っ直ぐなんです。撮るものに明確に真っ直ぐに向かっていくので、皆が不安になる瞬間が全く無い。現場はただただ穏やかな時間が流れているのに、結構狂気じみた作品を撮られる。すごいですよね。



『もっと超越した所へ。』(C) 2022『もっと超越したところへ。』製作委員会 


Q:最近はご自身でも監督をされましたが、いかがでしたか。


前田:いえいえ、あれは監督だとはとても言えません。プロのスタッフの皆さんに支えていただいて何とか作ることができましたが、潔くないと監督はやれないなと思いました。編集一つで如何様にでも変えられちゃう世界だし、「こんなに色々なことが出来るのか」と初めて知ったこともたくさんありました。


Q:色々と出演オファーも絶えないかと思いますが、出演を決める際のポイントなどがあれば教えてください。 


前田:自分で選り好みしたことは一度もないと思います。そのときの流れもあると思いますが、最近は有名な監督さんよりも、これからの新しい人たちとの出会いが増えているので、その流れでご一緒することが多くなりそうですね。でも黒沢さんや山下さんとはまた絶対にやりたい。それまでに自分が何を勉強できているのか、それはずっと自分の軸としてありますね。


Q:前田さんはかなりの映画好きだそうですが、好きな監督や映画作品を教えてください。

 

前田:私はとにかく若尾文子さんが大好きで、本当に死ぬほど好きなんです(笑)。今度、溝口健二監督の映画『夜の女たち』(48)をもとに、長塚圭史さんが演出される舞台に出させてもらうのですが、その作品と同時期の内容の『赤線地帯』(56)という若尾さん主演の映画をまさに昨日観たところです。「やっぱり若尾さんってすごい!最高!」って思いました。


Q:若尾文子さんとの出会いは何だったのでしょうか。


前田:TSUTAYAで特集があったんです。『青空娘』(57)のポスターがドーンと貼ってあって「なんて可愛い人なんだろう」って思って、何となくDVDを買って観てみたら見事にハマりました。引っ越しした際に、何千本とあったDVDを処分しちゃって今手元にあるのは少ないのですが、若尾さんの作品とウッディー・アレン、それとヒッチコックだけは残しています。あとマリリン・モンローの作品もあるかな。


Q:ヒッチコックも好きなんですね。


前田:その時代の女優さんたちがすごく好きなんですよ。グレース・ケリーとか、もう大好きですね。


Q:前田さんは本当にいい映画に出演されていて、監督たちに愛されていると感じます。今後はどういった作品に出てみたいですか。


前田:実は自分で出てみたい作品というのはないんです。それがあると、自分を自分の型にはめて抜け出せなくなってしまうのではないかなと。「私はこうなので、こういうのは出来ない」という思い込みが一番怖い。それをしないためにも、まっさらな状態は保っていたいですね。



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主演:前田敦子

1991年7月10日生まれ、千葉県出身。AKB48のメンバーとして活躍し、2012年に卒業。女優として、市川準監督の『あしたの私のつくり方』(07)で映画デビュー。11年、映画『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(田中誠監督)で初主演を飾る。近年の主な出演作に、『町田くんの世界』(19/石井裕也監督)、ロカルノ国際映画祭で上映された主演映画『旅のおわり世界のはじまり』(19/黒沢清監督)、『葬式の名人』(19/樋口尚文監督)、『くれなずめ』(21/松居大悟監督)、『DIVOC-12「睡眠倶楽部のすすめ」』(21/加藤拓人監督)、舞台「NODA・MAP第24回公演『フェイクスピア』」(21/野田秀樹演出)、ミュージカル「夜の女たち」(22/長塚圭史演出)などがある。また、WOWOWで放送・配信をする「アクターズ・ショート・フィルム2」にて短編映画の監督を務める。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『もっと超越した所へ。』

10月14日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

配給:ハピネットファントム・スタジオ

(C) 2022『もっと超越したところへ。』製作委員会 

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