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『ザ・メニュー』マーク・マイロッド監督 ロバート・アルトマンから得たインスピレーション【Director’s Interview Vol.260】
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食に対する愛と風刺
Q:特権意識への風刺として「料理」というものが使われていて、最初は料理そのものも風刺の対象に思えるのですが、映画が進むにつれてそうではないことが分かってくる。料理や食への敬意を感じますが、その辺は意識されていたのでしょうか。
マイロッド:映画を作るにあたり、まるでロックスターのようなスターシェフから洗い物担当の方まで、いろんな方に取材をしました。皆さん常にプレッシャーと戦いながら仕事をしていて、まるで軍隊のように次々と仕事をこなしていく。本当にリスペクトを感じました。その緊張感はぜひ表現したいと思いました。
また、ミシュランガイドの三つ星を獲得した女性シェフのドミニク・クレンさんが、料理全体の監修をしてくださり、同時にレイフ・ファインズにシェフたるものの哲学を教えてくれました。もはやアートとも呼べる料理の美しさやリアリティを作ることができたのは、まさに彼女のおかげです。他にも、「シェフのテーブル」という有名料理番組のクリエイターであるデヴィッド・ゲルブも協力してくれて、料理のクローズアップ撮影にアドバイスをくれました。
そうやってリアルさを追求できたおかげで、食に対する愛と風刺の両方を見せることができたと思います。
『ザ・メニュー』©2022 20th Century Studios. All rights reserved.
Q:レイフ・ファインズとアニャ・テイラー=ジョイの対立構造が物語を強く牽引してきます。現場での即興演技も許したとのことですが、二人とはどんなことを話されましたか。
マイロッド:二人とも素晴らしいアーティストで、撮影はとても楽しかったです。レイフとは「スローウィグとは一体何者なんだ?」と議論を重ねました。スローヴィクは本来愛していたものに対する気持ちを見失い、痛みを抱えている。契約という悪魔から逃れることが出来ない状況も含め、自分に対してすごく嫌悪感を持っている。レイフとはそういう見解で一致し、一緒にキャラクターを作っていきました。
アニャの演じるマーゴは、今置かれている状況を良くは思っていないけれど、まだ生きる望みや力を持っているキャラクター。このマーゴとスローヴィクがイデオロギー的にぶつかるから面白いのですが、アニャもレイフも個性が強いので、撮影しているとどんどん盛り上がってくる。二人を映しただけで美しい緊張感が生まれるし、同時に不思議なケミストリーも出てきた。とても面白かったですね。
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監督:マーク・マイロッド
HBO製作の「メディア王〜華麗なる一族〜」の初期3シーズン(18〜21)の製作総指揮と、13エピソードの監督を務める。同シーズン3の最終話の演出に対し、全米監督協会賞を受賞。同シリーズではゴールデン・グローブ賞とエミー賞を受賞し、同シーズン3の演出でエミー賞にノミネートされる。他の監督作品に「アリ・G」(02)、ロビン・ウィリアムズ主演の「ビッゴホワイト」(05)、『運命の元カレ』(11)、「アフェア 情事の行方」(14)、「ゲーム・オブ・スローンズ」の6エピソード(15〜17)、「恥はかき捨て」の3エピソード(04)とそのリメイク版「シェイムレス 俺たちに恥はない」の12エピソード(11〜18)などがある。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『ザ・メニュー』
11月18日(金)全国ロードショー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2022 20th Century Studios. All rights reserved.
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