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悩んだシーンで、ソン・ガンホが演じるから大丈夫だと気づかされました。ポン・ジュノ監督&ソン・ガンホ『パラサイト 半地下の家族』【Director’s Interview Vol.49】

悩んだシーンで、ソン・ガンホが演じるから大丈夫だと気づかされました。ポン・ジュノ監督&ソン・ガンホ『パラサイト 半地下の家族』【Director’s Interview Vol.49】

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カンヌ国際映画祭最高賞のパルムドール受賞に始まり、ゴールデン・グローブ賞の外国語映画賞受賞など、賞レースを席巻。アカデミー賞でもその動向が大きく注目されている映画『パラサイト 半地下の家族』。今回CINEMOREでは、来日したポン・ジュノ監督と主演のソン・ガンホ氏に直接インタビューできるという大変貴重な機会を得て、二人に話を伺うことができた。


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面白そうな話を思いついたら、貧富の差の話になっただけ



Q:本作は、二つの家族の個人的空間が大きなポイントになるかと思いますが、階級や貧困といった現代社会における普遍的な問題を、ミクロの世界を通して描く意義についてどうお考えですか?


ジュノ:ミクロの世界というのはつまり「家」のことだと思いますが、この作品は二つの家の中が映画の九割を占めていて、そこで展開していく物語です。たった二つの家の中だけで展開するにも関わらず、窮屈で単調に感じられないのは、この二つの家の中に全ての世界(裕福な世界と貧困な世界)が描かれているからだと思います。


それらの世界を描くために、それぞれの家が持つ「レイヤー」を細かく描くことを意識しました。裕福な家では、映画が進むにつれて最初は分からなかったことが徐々に明らかになり、あの家の中に様々な複合的な「レイヤー」があることがわかってきます。


一方貧しい家の方では、半地下を象徴する「窓」が重要な役割を果たします。あの家の窓から外を見ると、道路がちょうど目線の上にあり、そこからは通りを歩いている人の様子が見え、外の世界と繋がる一つの手段として、窓が存在しています。さらに大雨の時には、そこから水が家の中に流れ込んだりするわけですが、それはまさに外の世界から家が侵食されている様子、つまり貧しい人々の状況を象徴しているんです。




こんな風に考えていくと、この二つの家というものを通して、映画的な宇宙を作れるのではないかと思ったんです。


Q:映画を作る際、どうやってアイデアが生まれて、それをどのように具現化していくのでしょうか、そのプロセスを教えてください。


ジュノ:アイデアは、私たちの日常の中に溢れています。それをどう正確にキャッチして拾い上げるかが重要です。そのためには、絶えずアンテナを張っている必要がありますね。どんな傑作でも、その出発点は身近なところから始まっています。アイデアをただひたすら待つのではなく、自分の状態を敏感に保つことによって、日常に溢れるアイデアを捉えることが出来るのだと思います。


そのためにも、その感覚が鈍らないように、自分自身を繊細で敏感な状態に保つよう心がけていますね。


Q:今回は、なぜ貧富の差や不平等といったテーマを描こうと思われたのでしょうか?


ジュノ:確かにこの作品では、裕福な人と貧しい人が出てきて二極化について描かれていますが、そのことを学者のような視点で分析しようとか、メッセージとして伝えたいという意図はありませんでした。




何か面白い話、何か独特なストーリーはないかなと、いつものように考えていたんです。そこでふと、貧しい家の息子が裕福な家の家庭教師としてその家に入っていくところから、貧しい人がどんどん裕福な人の家に潜入していくというプロセスを考えていたら、これはとても面白そうだなと思いついたんです。


そんな風に、突拍子もないけど面白いなと思ったことを、脚本として書き進めていくうちに、今の話に至った次第です。結果的にそこには裕福な人や貧しい人が出てくることになったのですが、それを分析してみようとか、何かそれに対するメッセージを伝えようというところが出発点だった訳ではないのです。



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