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『メグレと若い女の死』パトリス・ルコント監督 撮りたいものは頭の中にハッキリある。無駄のない映画作り【Director’s Interview Vol.294】

©2021 CINÉ-@ F COMME FILM SND SCOPE PICTURES.

『メグレと若い女の死』パトリス・ルコント監督 撮りたいものは頭の中にハッキリある。無駄のない映画作り【Director’s Interview Vol.294】

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ドパルデュー版メグレ警視



Q:ルコント監督の映画では、仕事に真摯に取り組む職人気質の人が出てくる印象があります。そして彼らの生活も細かく描かれ、その何気ない描写が魅力的です。何か意識されていることはありますか


ルコント:これはシムノンも言っていますが、メグレはどこにでもいる非常に質素でシンプルな人物です。普段の生活の中で、カフェやメトロですれ違うような普通の人。それを表現するために日常の描写を大事にしました。この映画の中でのメグレは、普通に寝たり、髭を剃ったりして生活しています。私たちは誰もがメグレに自分を見出すことができる。彼は決してヒーローではないのです。


Q:ジェラール・ドパルデューの存在感が圧倒的で、メグレ警視は世の中の階級差を突き破る太い柱のようにも思えます。


ルコント:メグレは体も大きく存在感があるので、小さくて痩せた人が演じるのは無理な役柄でした。そして彼自身が醸し出す雰囲気やリズムもある。その点ドパルデューはフィジカル含めて全てが理想的でした。ドパルデュー自身、メグレの役をやりたいと思い続けてきたそうですが、不思議と今までオファーがなかったそうです。だから私がメグレ役をオファーしたときは2秒で快諾してくれましたよ(笑)。



『メグレと若い女の死』©2021 CINÉ-@ F COMME FILM SND SCOPE PICTURES.


俳優のみなさんは頭が良くて感受性が豊かな人が多く、ドパルデューもまさにそう。彼はシムノンの本をたくさん読みメグレという人物を研究していました。脚本が出来てドパルデューに読んでもらった段階で、彼はどんなメグレを演じるべきかすぐに理解できていました。メグレの人物像について、彼と話をする必要はありませんでしたね。


Q:メグレはブルジョアと一般市民の間にドンと割り込み、問題解決に動きます。階級差について意識されたことはありますか。


ルコント:元々メグレは権力者のことが好きではないんです。判事の前で帽子を取らなかったり、ブルジョアの人たちの前でコートを脱がないなど、メグレが静かな抵抗をしている場面がしょっちゅう見られます。彼はブルジョアではありませんし質素な人たちといるほうが好き。メグレを通してブルジョアや強い権力に対する抵抗を描けたと思います。




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