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『メグレと若い女の死』パトリス・ルコント監督 撮りたいものは頭の中にハッキリある。無駄のない映画作り【Director’s Interview Vol.294】

©2021 CINÉ-@ F COMME FILM SND SCOPE PICTURES.

『メグレと若い女の死』パトリス・ルコント監督 撮りたいものは頭の中にハッキリある。無駄のない映画作り【Director’s Interview Vol.294】

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光はどこから来ているのか



Q:今回の作品では、画面全体の色調やトーンが硬質で寒色系の雰囲気を感じます。何か意識されたものはありますか。


ルコント:今回の撮影においてトーンはすごく重要でした。メグレ警視は人生における黄昏時にさしかかっていて、仕事に対しても疲れが出始めている。その状況には、秋の黄昏時の光がよく似合う。その雰囲気を出すためにも照明や光は大事にしました。映画撮影において、光はどこから来ていて、どこから撮ればよいか、いつも自問自答しています。例えば部屋の中を撮影するとき、光はどこから入ってくるのか、窓なのか天井なのか、窓は一つにするのか、二つにするのか、そういったディテールを大切にして美術や照明チームと試行錯誤を重ねています。光は決して美しくある必要はありません。ストーリーと合っていることが重要なのです。



『メグレと若い女の死』©2021 CINÉ-@ F COMME FILM SND SCOPE PICTURES.


Q:ルコント監督は自身でカメラファインダーを覗きながら撮るスタイルだそうですが、撮影監督のイヴ・アンジェロさんとはどのような役割分担をされているのでしょうか。


ルコント:私がカメラを構えている間は、撮影監督はモニター前にいて光やアングルをチェックし全体を指揮してくれます。例えば「ドパルデューの顔半分だけに光をあてて欲しい」などと私が出す細かいリクエストに対し、撮影監督が光を調整してくれる。常に二人で話し合い二人三脚で撮影しています。


Q:自分が好きな作品は短いもの多いと仰っていましたが、影響を受けた監督や映画作品を教えてください。


ルコント:オーソン・ウェルズがすごく好きですね。その時代の映画が好きで、ジャック・ベッケル監督にも影響を受けました。その時代はフランス映画界も素晴らしい監督が多くて、特に音が素晴らしかったと思います。特別な一人のメンターがいたというよりは、様々なジャンルの映画をたくさん観て、それらに育てられたのだと思います。




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(C)CLAIRE GARATE


監督:パトリス・ルコント

1947年、フランス・パリに生まれる。IDHEC(フランスの映画学校)で学び、5年間漫画家、イラストレーターとしての活動を経て映画監督に。『タンデム』(87)で批評家らから注目され、日本で初めて劇場公開された『髪結いの亭主』(90)が大ヒット。その前作である『仕立て屋の恋』(89)もその後に日本で公開。以後、ミニシアターブームを牽引する存在となった。『リディキュール』(96)では第69 回アカデミー賞Ⓡ最優秀外国映画賞にノミネート。新作が公開する度に注目されるフランス映画界の巨匠。


【主な作品】

『タンデム』(87)『仕立て屋の恋』(89)『髪結いの亭主』(90)『タンゴ』(93)『イヴォンヌの香り』(94)『リディキュール』(96)『パトリス・ルコントの大喝采』(96)『ハーフ・ア・チャンス』(98)『橋の上の娘』(99)『サン・ピエールの生命(いのち)』(00)『フェリックスとローラ』(01)『歓楽通り』(02)『列車に乗った男』(02)『ぼくの大切なともだち』(06)『スーサイド・ショップ』(12)『暮れ逢い』(13)など



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。





『メグレと若い女の死』

3月17日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

配給:アンプラグド

©2021 CINÉ-@ F COMME FILM SND SCOPE PICTURES.

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