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『帰れない山』フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン&シャルロッテ・ファンデルメールシュ監督 大きな世界に存在すること【Director’s Interview Vol.310】

© 2022 WILDSIDE S.R.L. – RUFUS BV – MENUETTO BV –PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS – VISION DISTRIBUTION S.P.A

『帰れない山』フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン&シャルロッテ・ファンデルメールシュ監督 大きな世界に存在すること【Director’s Interview Vol.310】

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夫婦の危機を映画作りで乗り越える



Q:夫婦の危機を乗り越えようと共同で監督したとのことですが、映画作りに何を見出して共同で監督をされたのでしょうか。


フェリックス:お互いの関係が危機的な状況の中、ロックダウンが起こり世界が止まってしまった。部屋にずっと二人だけという緊張が続いているときに、この物語がやってきた。物語自体が人生の大切な部分を描いていたこともあり、この物語が私たちの関係を救ってくれるのではないか、そう思いました。映画は一人で作られるものではなく、様々な人たちと関わることによって、そこで生まれる化学反応やエネルギーから生み出されていくもの。映画作りによって人との関係が深まっていく。だからこそ、彼女に一緒にやろうと持ちかけたんです。


これまで彼女は演劇で演出や役者をやってきたこともあり、映画作りにトライするにはちょうどいいタイミングでした。また当時の僕はアメリカで映画を撮ったばかりで、アメリカでは一人で孤独な時間を過ごしていました。その反動もあり、一緒にやることに舵を切れたのだと思います。もちろん大変なこともありましたが、結果的にうまくいったと思いますね。



『帰れない山』© 2022 WILDSIDE S.R.L. – RUFUS BV – MENUETTO BV –PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS – VISION DISTRIBUTION S.P.A


Q:この映画は“山”も主役の一人ですが、空撮を駆使した雄大なショットだけではなく、人の目線で山と人物を捉えたショットも印象的でした。


フェリックス:山はストーリーの一部なので、ただ美しい風景を切り取ればいいというものではありません。そこでポイントになったのがアスペクト比でした。今回は4:3で撮影したのですが、さまざまなテストを行った結果、その比率に落ち着きました。縦の目線で山を描きたかったことと、ポートレート的観点から風景の中の人をしっかり捉えたかった。それが実現できたのが4:3の画角でした。上半分で山、下半分で人を捉えるような感覚でフレーミングしていきました。




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※向かって左からシャルロッテ・ファンデルメールシュ、フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン


監督・脚本:フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン

1977年11月1日、ベルギー・フランダース、ゲント生まれ。2000年にゲントの王立芸術アカデミー(KASK)を卒業し、映像芸術の学士を取得。クンフーというゲントの劇団で台本を書き、演出もしていた。2009年「あきれた日常(THE MISFORTUNATES)」が、カンヌ国際映画祭の監督週間でワールドプレミア上映され、国際的な注目を集めた。その後、『オーバー・ザ・ブルースカイ』(2012)が、2014年アカデミー賞® 外国語映画賞のベルギー代表に選出されノミネートを果たす。またセザール賞最優秀外国映画賞も受賞した。「ベルヒカ」(2016)は2016年サンダンス映画祭でプレミア上映され、ワールド・シネマ・ドラマ部門で監督賞を受賞。そして主演にスティーブ・カレルとティモシー・シャラメを迎えた、初めての英語作品『ビューティフル・ボーイ』(2018)を経て、本作に至る。



監督・脚本:シャルロッテ・ファンデルメールシュ

1983年11月11日、ベルギー・フランドル出身。アントワープのヘルマンテアリンク・インスティテュートで演劇芸術を学び、その後劇団で数多くの演劇作品に出演。2010年、テレビシリーズ「Dag & nacht」と映画「Turquaze」で主役を務める。また2012年、テレビシリーズ「Deadline 14/10」と、その続編「Deadline 25/5」(2014)で主役を演じる。『オーバー・ザ・ブルースカイ』(2012)では脚本に参加。『帰れない山』(2022)では、フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲンと共に脚本を務め、共同監督としても名を連ねている。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。





『帰れない山』

5月5日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋ほか全国公開

配給:セテラ ・インターナショナル

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