© 2022 WILDSIDE S.R.L. – RUFUS BV – MENUETTO BV –PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS – VISION DISTRIBUTION S.P.A
『帰れない山』フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン&シャルロッテ・ファンデルメールシュ監督 大きな世界に存在すること【Director’s Interview Vol.310】
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世界39言語に翻訳され、イタリア文学の最高峰・ストレーガ賞に輝いた同名の国際的ベストセラー小説が待望の映画化。山と対峙して己と向き合う青年たちの友情と魂の交流を、監督&脚本家である夫婦が共同監督し、丹念に紡ぎ出した。生きるとは?人間とは?圧倒的な大自然の中で描かれる対照的な二人の人生を通して、観ているものに多くのことを問いかけてくる。監督した二人は何を思いこの映画を作ったのか。話を伺った。
『帰れない山』あらすじ
都会育ちで繊細な少年ピエトロは、山を愛する両親と休暇を過ごしていた山麓の小さな村で、同い年で牛飼いをする、 野性味たっぷりのブルーノに出会う。まるで対照的な二人だったが、大自然の中を駆け回り、濃密な時間を過ごし、たちまち親交を深めてゆく。やがて思春期のピエトロは父親に反抗し、家族や山からも距離を置いてしまう。時は流れ、 父の悲報を受け、村に戻ったピエトロは、ブルーノと再会を果たし…。
Index
大きな世界に存在すること
Q:監督のコメントにある「小さな仕草で語られる、壮大な映画を作りたかった」という言葉にとても納得しました。その言葉通り理想的な形で結実していたと思います。
フェリックス:ありがとうございます。この映画が自分の居場所を世界中に見つけてくれました。ヨーロッパからアメリカ、そして日本で公開されることをすごく嬉しく思います。私たちはこの物語(原作)と出会い大きく心を動かされました。この映画もきっと多くの人々に響くと信じています。また、山での撮影は予測不能だと何度も注意されましたが、その予期できないこと自体を受け入れようと覚悟を決めていました。自然の恩恵を受けながら、自分たちがやろうとしたこと全てを達成することが出来たことには、感謝しかありません。
シャルロッテ:大自然の中に置かれた人間はとても弱い存在となりますが、その美しい環境で過ごすのはとても素晴らしいこと。実際の撮影でも山の中にずっといたわけですが、そこでは監督や役者など立場は全く関係なく、人としてそこにいることが大切でした。大きな世界の中に存在するということは一体どんなことなのか、それをこの作品で表現することが出来たと思います。
『帰れない山』© 2022 WILDSIDE S.R.L. – RUFUS BV – MENUETTO BV –PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS – VISION DISTRIBUTION S.P.A
Q:生き方の違うピエトロとブルーノですが、映画を観ると不思議と両方に共感してしまいます。
フェリックス:若い時に悩んでいたピエトロは歳を取るに連れて自分との折り合いが付き、徐々に自分を受け入れられるようになります。一方で、自分のやりたいことが最初から見えていたはずのブルーノは、成長するにしたがって自分ではどうにもならないことが増えてきてしまう。そんな二人がそれぞれ自分に無いものをお互いに補填しあっていく。それは観客と登場人物の間にも同じ関係が起こっているのかもしれません。
シャルロッテ:フェリックスはブルーノに近くて、ひとつの山を目指して登っていくタイプ。私は反対に8つの山*をさまよい巡っていくタイプ。実際に私は、役者や歌手、執筆作業など様々な形の表現を求めてきました。でもフェリックスの中にもピエトロが存在するし、私の中にもブルーノが存在する。それは見る視点によって変わってくるもの。ブルーノとピエトロの二人は、ある意味ひとつのアーキタイプを象徴していて、人の見方によってはそれが変わっていく。だから両方に共感する要素を感じるのだと思います。
*)8つの山(THE EIGHT MOUNTAINS):世界の中心には最も高い山、須弥山(スメール山、しゅみせん)があり、その周りを海、そして8つの山に囲まれている。8つの山すべてに登った者と、須弥山に登った者、どちらがより多くのことを学んだのか。 ※須弥山とは、古代インドの世界観で、世界の中心にそびえる聖なる山。仏教、バラモン教、ジャイナ教、ヒンドゥー教にも共有されている概念。ピエトロはネパールでこの話を知り、ブルーノに伝える。
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