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『シアター・キャンプ』ニック・リーバーマン監督 即興演技の瞬間を捉えるモキュメンタリースタイル【Director’s Interview Vol.361】
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瞬間を捉えるモキュメンタリースタイル
Q:モキュメンタリースタイルと通常のドラマのバランスが絶妙でした。“シアターキャンプ”を知らない我々からすると、このスタイルはとても効果的だったかと思います。
リーバーマン:モリーと私はドキュメンタリー全般からインスピレーションを受けています。私自身、ドキュメンタリーの編集者としての経験もありますし、ドキュメンタリーは、緊張感や距離感がとても面白い。手持ちカメラを多用することで発見がある作品にしたいと考え、撮影はドキュメンタリー畑の人にお願いしました。その彼は「何かが起こるのは一度だけ」という感覚の持ち主。ジョークが飛び出すのも、ちょっとした混乱や気まずい空気が起こるのも、その瞬間だけ。即興演技の臨場感を見事に捉えてくれました。
編集では、何が好きで何が嫌いかを徹底的にメモし、同じシーンを何度も繰り返し編集して、いくつかのバージョンを作りました。何日も費やして編集しても、最終的には「これは映画には入れない方がいい」という判断になることもありました。即興の場合は、こうしていろんなパターンを試して判断するしかなかったですね。
『シアター・キャンプ』©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
Q:長編映画初監督作ということですが、「面白い作品が出来ているぞ!」という確信はありましたか。
リーバーマン:コメディが興味深いのは、自分が面白いと思う瞬間があること。この瞬間を観ている人に伝える事ができれば、きっと気に入ってもらえると自信が持てる。しかしその笑いを実際に再現し、観客に「なぜこんなものを見ているんだろう」という迷える2時間を過ごさせない映画を作るのは、本当に難しいんです。観客を飽きさせないように尺を気にしつつ、一方で誰も気に留めないような細かい笑いのディテールを盛り込むことは至難の業でした。サンダンスで上映するまでは、この映画は万人向けではないかもしれないと思っていましたね。
Q:影響を受けた、好きな映画や監督がいれば教えて下さい。
リーバーマン:なかなかデッカい質問ですね(笑)。クリストファー・ゲストのコメディはこの映画に大きな影響を与えていると思います。ドキュメンタリーではD・A・ペネベイカーとフレデリック・ワイズマンがとても好きですね。二人からは、この映画の作り方をいろいろな意味で教えてもらいました。
また、史上最高の監督は黒澤明だと思っています。特に『赤ひげ』(65)は大好きな作品です。黒澤監督の場所に対する感覚と、登場人物をそれぞれの視点で捉え彼らを愛する感覚は、私が常に目指しているものです。
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監督/脚本/製作:ニック・リーバーマン
LA在住の監督・脚本家。ベン・プラット、レミ・ウルフなど、多彩なアーティストのミュージックビデオを手掛け、サムソン、ビルボード、フェンディなど多くの企業広告も担当している。『シアター・キャンプ』 (23) が、長編映画監督デビュー作となる。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『シアター・キャンプ』
10月6日(金)公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
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