©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
『シアター・キャンプ』ニック・リーバーマン監督 即興演技の瞬間を捉えるモキュメンタリースタイル【Director’s Interview Vol.361】
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サンダンス映画祭、SXSWで熱狂的に迎えられた映画『シアター・キャンプ』がいよいよ公開!個人的には今年ベスト級の面白さで、推しに推したい作品なのだ。
ミュージカル・スターを目指す子どもたちが集まるシアター・スクールで、今夏のキャンプ開校を目前に校長が昏睡状態に。演劇に無関心な息子トロイが経営に乗り出すが、内情は想像以上に火の車! スクール存続のためには、キャンプ終了までに出資者の前で新作ミュージカルを披露しなければならない。残された時間は3週間。変わり者揃いの教師と破天荒な子どもたちは果たして舞台を完成させ、スクールを存続させることができるのか…⁉︎
クセのあるキャラクターたちで溢れるシアター・スクールを、カメラはドキュメンタリースタイルで捉えていく。本作はいわゆる“モキュメンタリー”作品で、その手法のハマり具合は見事としか言いようがない。監督・脚本を手がけたのは、これが長編初監督作となるモリー・ゴードンとニック・リーバーマンの二人。二人はいかにしてこの傑作を作り上げたのか? 監督の一人であるニック・リーバーマンに話を伺った。
Index
子どもたちに指示した即興演技
Q:“シアター・キャンプ”はアメリカではポピュラーな行事なのでしょうか。
リーバーマン:シアター・キャンプという概念は、どこにでもあるものではないかもしれません。しかし演劇をやっている子や、ドラマのクラスを受けている子たちは普通にいます。私たちはキャンプという要素を、普段の生活から切り離した時間軸として活用しようと思ったんです。キャンプという行事が生み出す濃密な時間を元に、演劇や演劇をする子どもたちの普遍性を描きたかったのです。
Q:映画には個性的な子どもが多勢出てきますが、どのようにして集めたのでしょうか。
リーバーマン:バーナード・テスリーとクリスチャン・シャルボニエという2人の素晴らしいキャスティング・ディレクターのおかげです。彼らは映画のみならず、ニューヨーク演劇界のキャスティング・ディレクターでもあり、大人の役者だけではなく、今この時代を生きる素晴らしい子どもたちをたくさん知っていました。とても情熱的で演じることにワクワクしているような、自分の子ども時代に似ている子たちでした。
子どもたちは、我々が説明するまでもなくステージに立ち、自分たちのできることを披露し、宙返りやステージコンバットなど、あらゆることに取り組んでくれました。彼らのそのスピリットが映画に反映されていると思います。自分の能力を世界に示すことのできる子たちを映画に迎え入れらたことは、とても嬉しかったです。
『シアター・キャンプ』©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
Q:撮影では即興演技を採用されたそうですが、子どもたちへは具体的にどのように演出されたのでしょうか。
リーバーマン:スタッフの多くが「子どもたちにどうやって即興演技をさせるのか?」と心配していました。でも本当に難しかったのは、子どもたちに同じことを何度もやらせながらも、それを新鮮に感じさせることでした。効果的だったのは、ベン・プラット演じる先生を本当の先生だと思って子どもたちに接してもらったこと。大好きな先生に対して自分を印象付けるようにお願いしたんです。子どもたちの演技は本当に素晴らしくて、それぞれのキャラクターになりきって面白いことをたくさんしてくれました。映画を二度三度と観てみると、スクリーンのあちこちで色んなことをしてくれているのが分かるんです。
Q:子どもたちのキャラクター設定はどのように作られたのでしょうか。
リーバーマン:即興演技のおかげで、脚本に自由さを持つことができました。キャスティングの段階では、自分たちが起用したいキャラクターは確実にありましたが、何人かの子どもたちは、用意した役には当てはまらないけれど、起用したいと思わせるような素質を持っていました。その子たちがどんな役になるのかは分かりません。しかし「どの子がクラスにいたら面白いかな、この子たちの組み合わせはどうかな」と、クラス編成を考えるのはとても楽しい作業でしたし、最終的にはそれぞれの性格に合わせた登場キャラクターを作ることができました。
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