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『市子』戸田彬弘監督×杉咲 花 ロケハンに俳優が同行する意義とは?【Director’s InterviewVol.376】

『市子』戸田彬弘監督×杉咲 花 ロケハンに俳優が同行する意義とは?【Director’s InterviewVol.376】

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新たな議論が生まれるといい



Q:お話を伺っていると俳優に寄り添った現場の印象がありますが、それは監督が意図されたことでしょうか

 

戸田:僕はもともと演劇の学校出身で、俳優と一緒にものを作って来た感覚が強く、俳優から何かが生まれてくるのが好き。今回のスタッフのほとんどがこれまで一緒に映画を作って来た人達だったので、多分皆その辺を分かってくれているのだと思います。僕は基本的には俳優を撮るし、特にこの作品は“俳優を撮る”映画。俳優が最も良いパフォーマンスを出せる環境を作ろうと、皆動いてくれたのだと思います。

 


『市子』©2023 映画「市子」製作委員会


Q:本作は徐々に全容が明らかになっていくミステリー作品でもあります。謎に対しての推察は映画への没入感を深め、必然的にその人物の置かれた社会状況や感情にまで潜り込むことになる。その意味では、映画というエンターテインメントは考えるきっかけを与えてくれるメディアでもあると思いますが、皆さんの中にもそのような意識はありますか?

 

戸田:映画は色んなジャンルがあって、楽しく笑って帰れる映画も素晴らしいと思います。ただ、人生において他人のことをこんなにも詳しく知る機会は、映画やドラマだからこそ。そういう意味では、映画って“ある他人”の人生と出会う為にあるんだなと。それによって深く人間のことを知れたり、考えたり、問題定義に触れられたりする。すごく重要なコンテンツだと思います。

 

杉咲:私は、他者を眼差すということはすなわち自分を眼差すことでもあると思っていて。その視線が自分に返ってくる。この映画においても、市子をどう受け止めるかということが自分たちの生活に鏡のように反映される気がしています。実生活から一歩外に出た世界にアクセスすることは、社会を生きる人間として必要なことだと思います。だからこそ、社会と接点を持てる作品に関われることは本当にありがたく、演じ終えたからといって区切りをつけられるものではない。「複雑だよね」という言葉で片付けるのではなく、問い続ける必要があり、そこから新たな議論が生まれるといい。そんな願いがあります。



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監督:戸田彬弘

1983年生まれ。奈良県出身。チーズfilm代表取締役。チーズtheater主宰。日本劇作家協会会員。映画監督、脚本家、演出家として活動。 2014年『ねこにみかん』で劇場デビュー。代表作は『名前』(2018年)、『僕たちは変わらない朝を迎える』 (2021年) 、『散歩時間~その日を待ちながら~』(2022年)などが有り、国内外の映画祭で受賞。舞台では『川辺市子のために』がサンモールスタジオ選定賞2015最優秀脚本賞を受賞。ほか、チーズtheater全作品の作・演出を担当。外部演出は、大竹野正典作『黄昏ワルツ』、横山拓也作『エダニク』、花田明子作『鈴虫のこえ、宵のホタル』、松田正隆作『海と日傘』など。近年は、舞台『ある風景』(2023年)が日本劇作家協会プログラムとして上演。テレビ東京『けむたい姉とずるい妹』(2023年10月期)を監督。2023年12月8日から杉咲花主演の映画『市子』が全国公開。





主演:杉咲 花

1997年生まれ、東京都出身。『湯を沸かすほどの熱い愛』(16/中野量太監督)で第40回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞をはじめ、多くの映画賞を受賞。「とと姉ちゃん」(16/NHK)でヒロインの妹を演じ、「花のち晴れ〜花男 Next Season〜」(18/TBS)では連続ドラマ初主演を果たす。その後、NHK 連続テレビ小説「おちょやん」(20-21)と「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」(21/NTV)で第30回橋田賞新人賞を受賞。近年の主な出演作に『十二人の死にたい子どもたち』(19/堤幸彦監督)、『青くて痛くて脆い』(20/狩山俊輔監督)、『妖怪大戦争ガーディアンズ』(21/三池崇史監督)『99.9-刑事専門弁護士 -THE MOVIE』(21/木村ひさし監督)、『大名倒産』(23/ 前田哲監督)、『杉咲花の撮休』(23/WOWOW)、『法廷遊戯』(公開中)などがある。今後も『52ヘルツのクジラたち』(24年3月公開)などが待機中。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『市子』

12月8日(金)テアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

配給:ハピネットファントム・スタジオ

©2023 映画「市子」製作委員会

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